『ひっ越し後』
□膝まくら(15歳以上推奨)
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カツ…
…ギィ…
その音にエドワードがパチッと目を開ける。
「鋼の…?」
開けた部屋はベッドサイドの明かりだけで、姿が見えなかったので、マスタングは声を掛けてみたのだが、返事はない。
カツ、カツ…
近付いて来る足音。
軍人の履く黒い安全靴のブーツが重く硬い音を静かな部屋に響かせる。
「眠っているのかね…」
待たせてしまった自覚があるのか、少しすまなそうな囁きが、エドワードが潜っている頭のすぐ上でする。
顔を出すタイミングがはかれず、エドワードは困って固まってしまった。動いたら起きているのを知られてしまうし、それはこれだけ待たされた事の仕返しにならない。
「…ふム。仕方ない…。予定をだいぶオーバーしてしまったからな」
今度はあまり音を立てないようにマスタングが着替え始める。エドワードは今度こそ毛布をめくる時を逃してしまい、ジダンダを踏む気分だった。
ズズッと何か床を引きずる音。
バサッと紙が置かれる音に、エドワードは思わず毛布を除けた。
「…鋼の。起こしてしまったかな」
ちょっと驚いたように眉を上げ、マスタングがこちらを見た。まだ軍服のシャツとズホンのままで、彼は分厚い書類らしき物を手に机をベッドサイドまで引っ張って来ていた。