『ひっ越し前』
□『悪戯』
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「…エド…」
「…ん…」
ベッドを覗き込み、眠っているのを確認する。耳元で声をかけたのがくすぐったいのか、エドワードがベッドに潜り込んでしまう。
「まったく…」
コートを腕にかけたまま寝室に入ってきたマスタングは、自分だけが早く顔を見たいと思っていたらしいことに、ちょっと悲しくなった。この姿はまぬけとしか言いようがない。
仕方なくコートをかけ、軍服の上着を脱ぎ始める。
「…」
彼が泊めろ、と言って来たのは今日の昼。
それも電話が一本入っただけで、理由も言わないまま切られてしまった。それでも帰宅したら半年振りに顔を合わせるのだから、不機嫌極まりない態度でも構わないから…言葉を交わすことを期待していたのに。
振り回されているのは確実に大人の自分のほうだった。
「エド、エドワード…」
もう一度、体をかがめ、エドワードの耳に舌を這わせる。起きていたら簡単にはこんなことさせてくれない。
「…や…っ」
「…?」
その声に驚いたのはマスタングの方だった。その反応を確かめるように、ベッドに手をつきエドワードの顔を覗き込んだ。
ぎゅっと、目を閉じている。
「ん…?どうした?」
言葉を返さない彼に、マスタングは腹のあたりに意地悪い悪戯心がこみ上げてくるのを感じ、エドワードの耳を濡れた舌で思い切り舐め上げた。
「…!」
びくっと、ベッドの中でエドワードが体を揺らす。
それはどうしたって、マスタングの気分を高揚させて。思わず毛布のなかへ手を差し込んでしまう。
「や、やめ…っ」
ようやく顔をこちらに向けたエドワードに、薄暗い中、ふっと笑うとシャツとズボンの境あたりに指をあて、抵抗される前に下着の中を探った。
「んぅっ!」
「おや?…まだキスもしていないだろう…?」
マスタングの手首を慌ててつかんでも、もう手の中に収められてしまった自分の体の反応は隠し切れない。マスタングが嬉しそうに声を殺して笑うのがわかる。
耳元にそれが伝わって、エドワードはよけいに心臓が高鳴って、体が震えた。
「大佐…!や、待てって…やだ」
「待てないのはそっちじゃないのか」
背後から回された手でさすり上げられ、耳元に囁かれる声は、睡魔の誘惑と相まって抵抗する力を奪う。
「いい子だ…、そのまま、声を聞かせておくれ」
「やぁ…、ダメ、ダメ…!は…んんっ」
マスタングの手の動きに体が揺れ刺激を増す。すがるように伸ばす手を押さえつけれると抗えないことが羞恥心を煽った。
ベッドにのりあげたマスタングが、エドワードの夢うつつで吐く声に喉をならす。
「エド…」
「い…や…!イ…」
それを言葉にはできない。こんな体勢でいきなりここまで上り詰めさせられて、これ以上さらせない。
「ん?イキそうか…?」
「は、あぁ…!や、ん…!!」
マスタングの声が射抜くエドワードの意識。
「……は、ぁ…」
エドワードの、のけ反って耐えた衝撃と法悦の表情に、マスタングがスリッと、頬を寄せる。
「大丈夫か…」
「…っんなわけ、あるか…っ」
「とても気持ちよさそうだったが…眠いときは感じやすいのだな、覚えておくか」
「ば…っかや、ろ!」
にや、と笑う感覚にエドワードが力なくも反抗しようとして手首を捕まれた。
「ほら、続きがまだだ」
「うぇ、待てって…っ」
ガバッと覆いかぶさられ、エドワードが大きく手足を振って抵抗する。
「無理だ、半年…待ったんだぞ」
「他で発散しとけよ!ばか!」
「…いいのか、発散して」
「……」
エドワードは即答できないことに、匙を投げた。