『番外*花町』
□『番外コネタ 其の四』
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「エ、エドワード!そんな、に…!」
「なんだよ〜」
エドワードはちょっと酔っ払った表情でえいえいとロイの膝を爪の先で押す。
ロイが困ったように顔を歪めてエドワードの足首を捕まえた。
「そんな、に!足を絡めるんじゃ…ない…っっ」
「うみゃ〜うぅ」
「っこら!!」
「ふみゅぅん…だぁんんなぁ…ん」
クックッと笑うエドワードはどう見てもからかっている。
わざと作った猫撫で声が何ともコバカにしてくれる。
女郎遊びの足相撲。
仰向けに向かい合って両手を畳についた体勢で、足だけで相手をひっくり返すか、参ったと言わせたら勝ちなのだが、この遊びは女郎の着物が肌蹴るのを見て楽しむものだ。たいてい女は今で言う下着を身に着けていないから、男としては、ちらと覗くそれに心躍らせる。
エドワードも長襦袢の下には特に何もつけていない。
ロイとしてはそれに困っているのだが、いかんせん、エドワードの負けん気の強さから、そんな事はすっかり忘れているようで、着物が肌蹴ようがまったく気にしていない様子。
すりすりとロイの着物を押し退け素足を吸い付かせエドワードが深く指先を這わせて来る。
「………くっ…」
「旦那〜、負けるぜ?このまんまだと」
したり顔で上目遣いに笑うエドワードに、ロイはあらぬ反応を下肢に感じてどうにかその誘惑を解こうとエドワードの足首をぐい、と引きはがす。
「いったいっ。優しくしろよぉ…せっかくちょっとくらい色っぽい事してやってんのにぃ」
「エドワード、おまえ…。酔っているだろう」
ぜぇぜぇと肩で息をしながら、ロイはとにかくエドワードの足を放し、むん、と畳に放った。
まったく、自分が何をしているのか自覚がないのだな、と思うと楽しいものもまったく楽しくない。
「うみゅう?」
わざとらしく指を軽くくわえて上目遣いにロイを見るエドワードは、絶対あと数分でぱったり倒れて眠ってしまうのは目に見えていた。
眠いのだ。
子どもは限界まで遊んでぱったりと倒れて眠る。
「ああ、もう……っ」
ロイは珍しく苛立った声を出して頭をかいた。
どうやってこの自身をなだめてやればいいのだ。
確実にくい、と軽く反りを見せているはずだ。
何せエドワードが向かい合った体勢で煽るように、ほれほれと着物を肌蹴させて膝まで露にして足を絡めていたのだ。
酒で紅潮した顔で蝋燭の炎で飴色の瞳に艶を乗せ、口元にはロイの反応を楽しむような笑みを浮かべられたら、ロイの理性など粉々にされてしまう。
こちらがもう少し内腿まで擦ってやったら逆にエドワードが降参して本当に媚声を発していたかもしれない。聞いてみたいものだが、そんな事をしたら、オリヴィエの大太刀でバッサリ切り捨てられてしまう。
「うー……ん……」
くるん、とエドワードの視界が回る。
あ、とロイが慌ててエドワードの帯を引っ掴んで畳に頭から落ちるのを制した。
くた、となったエドワードはふふ、と笑いながらロイの腕に頭を乗せ、眠りにつこうとしている。
ロイは案の定な展開に、ふ、と自嘲しながらエドワードの頭を膝に乗せてやる。
むにゃむにゃと子どもらしく口元を動かし、すり付いて来る。
とても襲えないくらい無防備。
ここまで気を許してくれているのは嬉しいのだが、反面かなり苦しい。
ああ、いっそ身請けして嫌というほどこの身を味わいたいというのに。
よくまぁここまで我慢しているものだ。自分で自分を褒めてやりたい。
抱ける日がくるなら…。
「……思い切り…啼かせてやるぞ、覚悟しておけ」
そんな脅しも眠ってしまったエドワードの耳に届くはずもないが、頭からぴょんと飛び出ている猫のような耳は、それすらからかうようにピピ、と揺れて、ぱったと垂れた。
「………はぁ」
エドワードの愛らしい寝顔を見下ろしながら、ロイは今夜何度目かの溜息をついた。
忍耐。
そう、忍耐だ。
自分に喝を入れ、ロイはぐぐ、と拳を握り締めた。
→ ねぇ?えどわど様はまったく何も考えてないですよ。
でもこんな遊びはロイたんとしかしないんです。だって、他の客としたらあっつう間に襲われる事受けあいっすから。くふふ。
MAGU