『あくまでいちゃラブなロイエド』
□『夕焼け』
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「んー…」
ごろん
「痛…っ」
マスタングが小さく悲鳴を上げて顔をしかめた。
かなり重い衝撃に目を開けると、どうやらエドワードの機械鎧が見事に額を打ったらしい。
「〜〜」
額をさすりながらため息をついて天井を見上げる。
ちら、と横目で隣を見ればエドワードがすやすやと寝息を立てて眠っていた。
「…そうか」
眠っていたか。
体を起こすべきかどうか、マスタングは少し考えた。
ここは、エドワードとアルフォンスが泊まっている宿だからいつ弟が帰ってきてもおかしくない。
今度また旅に出る二人にちょっとした情報を届けに寄っただけだったのだが、些細な事で口喧嘩をしてしまった。結局ふて寝を決め込んだエドワードの隣で、彼の本を読んでいるうちに眠ってしまったようだ。
「困ったな…」
いや、ただ眠っていただけなら体を起こすのは簡単だったのだが、どうやらエドワードは自分を抱き枕にしているようだし。
寝返りを打った拍子に機械鎧が額を直撃し、そのままぴったりと添い寝状態になってしまった。
挙句に。
「…んー…」
「―っ」
抱え込まれた。
「…あー…」
ここが自分の家なら問題は何もないのに。
マスタングは苦笑いをしながらエドワードの頭をそっと持ち上げて腕枕をする。
夕暮れ近くになった薄暗い部屋に、最後の太陽の暖かさが差し込んでいた。
「いつもこうしてくれていれば、な…」
このまだ幼さの残る寝顔をした恋人は、意地っ張りというか、まぁ、女性のように甘えてくるわけもないが、いつだって口も悪いし、態度も悪い。
体を重ねることの戸惑いもあるのだろうし。
「少しは男らしい顔になったか…」
初めて会ったときを思い出せば、エドワードは逞しくなったと言える。
もともと、芯の強いエドワードのこれまでの経験を考えれば、本当に、よく成長したなと少しは大人らしい目で見てやれる。
「ほんとに私は…」
悪い大人なのだな。
こうして眠っているところを起こしたくないと思うより、抱きついてくれていることの方が嬉しくて、体を起こせないなんて。
「…大佐…?」
「お…」
起きた。
「――っっ」
自分の体勢にエドワードがピキッと体を硬直させた。
「ああ、いや…」
しまった。
自分のせいではないのだが、マスタングは少し焦った。つい腕枕なんぞをしてしまったから、どう考えてもこれでは自分がこの体勢を仕向けたようにとられる。
「…」
動けないでいるエドワードを、どうしてやればいいのやら。
わき腹辺りに当たるエドワードの心臓が早くなっていくのがわかって、マスタングは、う、と言葉に詰まった。
「…すまん」
なんとなくそれしか出てこなくて、マスタングは腕枕をしている手でエドワードの髪を撫でる。
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