★猫の嫁入り★

□『子猫がうちにやって来た?』
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マスタングさんは子猫を見つけました。

それはそれは毛並みのよろしい子猫です。

部下のハボックが最初に見つけた路地裏の小さなペットショップでしたが、マスタングさんは運命の出逢いをしました。


ようやく家に連れ帰れる事になりましたが、前途難である事は誰の目にも明らかです。





* * * * * * * * * * *



その日はこの冬一番の寒波が襲う、風の冷たい夜でした。

でもマスタングさんの懐はとくとくと脈打つ温かい毛玉がまるーく丸くなっていたのでした。





「ほら」
「みぎゃっ」
「〜〜〜〜っ」

ぼふ、とマスタングの腕の中から顔を出しジタバタと大騒ぎのすえ、飛び下りざま置き土産とばかりにエドワードの爪が引っ掻き、ぴしりと尾が鋭く頬を打った。
とん、と微かな足音で床に着地したエドワードはきゅ、と体を丸めて低い体勢で部屋を見回す。

「……むぅ…」

警戒心を満面に浮かべた視線は、エドワードが走り回るには少し狭いかもしれないリビングの端までをくまなく流れた。
マスタングは苦笑した口の片端を上げてその場にしゃがみ込むとエドワードの頭の上からひょい、と顔を出す。

「どうだね、気に入ったかい?」
「んむー……」

マスタングの息が掛かってエドワードがぴく、ぴく、と耳を跳ねさせる。うざったそうに低く唸りながらエドワードは一歩いっぽ床に手をつけて歩き出した。

「エドワード?」

猫など飼った事などなく、野良猫にはいつも威嚇されて触らせてももらえないマスタングにとってはエドワードのぎんぎんに張り詰めた緊張と警戒のオーラが見えるような状態は、かなり興味が引かれてだいぶ楽しい見物だった。
そろそろと足を動かし尻尾をゆらゆらさせてエドワードは壁に添うように付かず離れず進む。
さらと壁に尻尾の毛が触れてびくっとなるたびに体中から電気を発するみたいに見える。それでも悲鳴のような声も出さず、エドワードは鼻をひくひくさせて静かにリビングを一周して行く。

「………」

マスタングは相変わらずしゃがみ込んだまま頬杖をつき、その姿を眺めた。知らずぽわんとした気持ちにうっすら口を開いていたが、エドワードのふわふわした尻尾が揺れるのに釘付けになって目が離せない。

「かわ…いぃ」
「み゛!?」
「んん!?」

リビングの角を二つ曲がって、尻を向けていたエドワードがふいとこちらを向いた時、マスタングの口をついた呟きにエドワードがガバッと顔を上げた。
その逆三角に眉のつり上がった形相にマスタングがぎょっとして目を見開いた。
そしてぶるっと肩を震わせるエドワードを見て、思っていた事が口からこぼれていたことに気付いた。

「……んみ!」

ぷいとエドワードがそっぽを向いてしまう。
しまったな、と思いつつ気まずそうにマスタングは片手で顔を覆った隙間からエドワードを見た。
が、エドワードが膨らませた頬を少しだけ赤らめているのを端で捉えたとたん、ぐっさりと胸をハートの矢尻で射抜かれた。

「っかわぃぃ…」

可愛すぎる。

またぎぎ、と睨むエドワードの顔が怒りで赤くなっていくのに気付かないまま、マスタングは両手で顔を覆い、くう、と喜びを噛み締めた。

もちろん、次の瞬間、シャキーンと爪を光らせたエドワードが宙を舞ってマスタングに凄い数の引っ掻き傷をつけたのは、言うに及ばず、である。

「エ、エドワード…!!」
「ふ…ぎぃみゃーっっ」

とにかく、雄のエドワードに『可愛い』は禁句である。




そんなこんなで、マスタングは大枚をはたいて子猫を貰い受けた。
戸籍に、エドワードの名前が連ねられるのは、明日の朝。

















→ 色んな裏話?いやいや、本編がないと読んでもわかんないのでは!?とも思うシリーズになりそうな…(^^;
でもでも、本編ネタばらしにならない程度には散りばめないとっム
戸籍とか、ハボックの絡みとか?その辺?
複雑な事は多分ないですよム
よくあるエドにゃんとマスタングのいちゃいちゃ生活ですよ、えぇ。
MAGU

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