『あくまでいちゃラブなロイエド』

□『基本的なこと』
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キス、好きだろう。

「……っ」

悪いか。

エドワードはビキ、と走る怒りに、マスタングの頭を背もたれに押し付け、体を寄せる。

興味があって何が悪い。
あんたと、キスしたい、なんて、もうずっと前から思ってたコトだ。
だからできるならいつだってしたいって思うのが、男じゃねぇの?

エドワードが、のけ反ったマスタングの顎を軽く引いて唇を開かせ、舌を滑り込ませる。

く、とマスタングが唇に笑みを浮かべ、エドワードの髪を撫でて強く引き寄せた。
互いの口内を埋めるように舌が絡まっていくことに、エドワードの背中にゾクゾクとした熱が走る。


「…キスが好きなのは、そっち、…だろ」
「…ふ、それは…君が好きだからだろう?……もう、…いいのか…?」
「……」

まだ相手の息の温度も分かる距離を保ちながら、マスタングがエドワードの腰を軽く掴んで自分の足の付け根辺りまで体を引き寄せた。

「―っ」

ビク、とエドワードが足を震わせる。

熱い。

自分の体が。

「……」

悔しいような切ない気持ちが胸を占め、エドワードはマスタングを見下ろす。

「腰を、下ろして」
「…う、やめ」

今は触れられたくない。
マスタングはそれを知っていながら、体を堅くするエドワードを座らせた。

「…ぅっ」
「…ほんとに、キスが好きなんだな…君は」

あれだけで、体を反応させるなんて。

「確かに…子どもとは言い切れないよ」

クスクスと笑う声に、エドワードは殴り倒したい気持ちと、このまま、キスをしたい気持ちとがいっしょくたになって言葉もない。


「エドワード…?」
「……キスした、い?」
「ああ、…して欲しいな」

嬉しそうに笑うマスタングは、やはり大人で、こちらを落とす術を心得ている。エドワードはその顔に照れるような気持ちがわくのを隠しながら、再び唇を重ねる。

「……ん…ん…ん、ぅ…」

今度はマスタングが顎を押し上げてエドワードの唇を割らせる。

まとわりつくような舌に、エドワードが閉じたまぶたを時折ぴく、と動かす。
マスタングが薄目を開けて見えるそれに、かき立てられエドワードの舌を捕らえて、溶かしていく。

エドワードが今、キスに夢中になるのは確かに子どもがお気に入りのおもちゃに執着するようなものかもしれない。

ただ、彼の持つ熱は子どもの域を越えようとしている。

「…っん、…大…佐…う、ん…」

自分とマスタングの唇がたてる濡れた音に、エドワードが恍惚とした顔を見せる。
でもそれは確実に、男の子のものだ。

マスタングが、我が身の昔を思い出して、ふふ、と笑う。
こうやって自分も覚えていった手管。

すべて教えてやってもいい。それとも、…覚え込ませようか。
飲み込みの早い子だから。


「んー…っ、…はぁ…」

エドワードがクラクラする意識を戻すように顔を上げ、大きく息を吸う。
その姿にマスタングが口に軽く手を当て笑いを堪える。

「…何だよ」
「急に、男の子の顔に戻るんだな。キスしている間は…少しは色っぽいのに」
「ふ〜ん。俺に色気感じんの?」
「ん?…まあな。いい男になる色気だよ」

クックッと笑うマスタングに、エドワードがムスッとしてマスタングの軍服の上から左胸を人さし指でトン、と突き刺す。

「んん?なんだい」

「見てろよ?ぜってー俺のがあんたよりイイ男になってやるからなぁ。惚れ込むぜ」
「……」

にや、とエドワードが笑う。
マスタングは驚いて目を見開いた。
そしてエドワードがマスタングの膝に腰を下ろして体を滑らせてマスタングの首に下から腕を掛けると、もう一度唇を寄せる。

「…ふふ…そうか。そうだな」
「…泣けるくらい惚れちゃうかもよ?」

互いの口に浮かぶ満足そうな笑みを、重ね合う。

泣けるくらい。


ああ、そうだろうな。

私はもう何度も君に惚れ直しているよ。
そう、君に逢うたびに。













→次ページ、後日談。
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