『あくまでいちゃラブなロイエド』

□『基本的なこと』
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「な…!?」
「男同士だとな、こっち使うわけ、…よ!」
「ーっ」

足を上げた事で体の奥がハボックの下肢に当たる。

「う、わわっ」

エドワードが慌てても、ハボックのからかうような動きは止まらず、グイグイと腰を押し当てて来る。

みるみるエドワードの頭に血が上って顔が赤くなっていく。

「ん!やっべ!…すとーっぷ!」

「〜〜〜っ」

ギリギリと奥歯を噛んでいたエドワードに、ハボックがピタッと動きを止める。

「???」

う、とハボックが顎を引いて下を向く。

「あー…やべ。も少しでその気んなるとこだった」

少しして顔を上げたハボックに、エドワードの血管がプツッと音を立てて切れる。

「…こんの…っ」
「エド、あぶね…っ」

エドワードが落ちることなどものともしないで両腕を放し、ハボックの胸ぐらをわし掴みにする。

「おわっっ」
「うお…!」
「エド!」

引っ張られてハボックが前のめりに倒れて行く。ブレダが驚いてエドワードを受け止めようと滑り込んだ。

「ぎゃっっ」
「う…!!」
「ったっっ」

ブレダの飛び込んだ先に落ちてきたエドワードの上に、ハボックが倒れ込んだ。

「いって〜…」

エドワードがクッション有りでも、ハボックの重さに軽く頭を打って顔をしかめた。

「お、前たち…っっ」
「え…?」

とりあえず無事だったエドワードが、恐ろしく怒りのこもった声がズガン、と頭上を走ったことに顔を向けた。

「た、大佐…!!」
「何をしている」

気付いたブレダとハボックがその声の放つ有無を言わせない重いオーラに喉の奥で悲鳴を上げた。

「戻って来ないと思ったら」

ガシッとハボックの襟首を掴んで、マスタングがエドワードから引き剥がす。
「いや、あの、」

ハボックが言い訳があるのに続けられずに尻餅をついてあとずさった。


「鋼の!」
「う、い、や、…」

勢いそのままに、エドワードが引っ張られて立ち上がる。

最後にブレダが声も出せずに固まっていると、マスタングの引きつった笑顔が見下ろす。

「―!」

俺じゃ…!

ない、と思った時にはビシ…ッと音がして、頭の真横から煙が上がった。マスタングの稲妻のような焔が耳を掠めたのだ。

「…」

火花の音にビクッと目を閉じたハボックが恐る恐る目を開けた時、マスタングはビ、と手をハボックの頭上で構えていた。

「あ、お、大…大佐、あの、だってエドがき、聞きたいっつ、うから」
「…だからって実践はいらん!」
「や、だって分かり易…」
「不能にしてくれる」
「―っ」

本気だ。

マスタングの瞳にハボックが声も失って縮み上がった。

ぐん、とマスタングが手を掲げると、エドワードが慌ててその後ろ姿に飛び付いて軍服の上着を引っ掴んだ。

「ちょ、待てよ!!大佐!」
「放したまえ」
「ふざけてただけだろ!?何マジでイカってんだよ!!」

エドワードが全体重をかけて引っ張る。
必死で止めに入るエドワードに、マスタングが少し止まり軽くピシ、と火花を手元だけでちらつかせた。

「―っ」

それだけでハボックが気絶しそうな顔で息を止める。

「…鋼の。来なさい。フザケすぎだ…少しお灸をすえてやらないといけないようだな」
「…」

肩越しの視線は、それがハボック少尉の下半身の未来を選ばせているようで、エドワードは勢いよく何度も頷く。

「わ、わかったから。もう」

「お前たちも、もう少し考えてから行動するんだな」
「…」
「…」

マスタングの言葉に、ブレダとハボックが返事もできないまま、マスタングは身を翻してエドワードの真っ赤なコートの襟をぐいと掴んだ。

「来なさい」
「ぅはー…」

いつもならこんな簡単に引きずらせたりしないのだが、さすがのエドワードも自分せいでハボックとブレダが死ぬ思いをしたことに反省しているように、引きずられて行く。



「……なん、何、なんだ?大佐のあれ…」
「怒髪天…」

ハボックが口をパクパクしているのをブレダが刺す。

「何でだよーっ。別にエドだってそこまで子どもじゃねーじゃん!?」
「あー…まぁ、後見人だからじゃねぇ?大佐」

確かに少し度が過ぎたかと思うくらい、エドワードが真っ赤になっていたが、経験も何もないんだし。いや、いきなり相手がハボック、というでかい図体だったことが悪かったのか。


「…大将、大丈夫かな?」
「ん、てめっ。俺らが中尉に怒られっぞ!」
「ぅお!やべ…!俺なんか上官に強制猥褻…!?」

人の心配より自分の心配しろ、とブレダとハボックは頭を抱えた。

ハボックにしてみたら、エドワード相手ならあれができんじゃないか、と思ったコトなど、口が裂けても言えない。






えきべん。

いや、体勢としてはいけたのだが。

「〜〜〜〜っ」

頭を抱えたまま、ハボックはぐるぐるする思考回路に目を回した。






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