「ライナス、何か落としたぞ」
ライナスのポケットから落ちた小さなメモ帳をひょいと拾い上げ、ラスティが言った。
「え?あ、それ!!中見ちゃ駄目ーー!」
何やら突然慌ててメモ帳を取り返しに来たライナスを不審に思い、何が書いてあるのか気になって、ライナスが止めるのも聞かずにそれを開くと。
「…なんだこれ」
中には何の変哲もない仕事の内容が書かれていた。
しかし所々、自問自答のような、ポエムとも取れるような文が書いてある。
―ラスティとダニーとニューヨークの喫茶店で仕事の打合せ。二人の会話が早すぎて何が何やら…
―ラスティの変装は完璧だと思う。俺も見習わなきゃ
―自分、駄目だー
等々。
「あーもう!!何で見るんだよ!!最悪だ…」
顔を赤くしてうずくまるライナス。
「勉強熱心だな」
ラスティはできるだけ真面目に言ったつもりだったが、笑いが抑えきれずに声が震えてしまった。
「いいよ、もう、笑えよ!!!」
転がった手帳の横にはやけくそなライナスに苦笑しながら、悪かったって、と頑張ってなだめるラスティが居た。