Cool Blue

□片割れ月に鴉が詠う
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「生憎だけどね、忍は自分の情報ってのをそう易々とは洩らせないんだよ」

それを聞いた小十郎はふむ、と唸ると、佐助の耳元に顔を寄せて囁きかける。

「…なら、身体に直接訊いてみるしかねぇな?」

首筋に甘く噛みつかれると、佐助は微笑いながら小十郎の背中に両腕をまわした。

「忍はどんな尋問にだって耐えられるって事、知らないのかよ?」

「俺の『尋問』に最後まで耐えられた事が一度もないヤツが、自慢げに言っていい科白じゃねぇな」

布団の上にゆっくりと押し倒されながら、佐助は口唇を塞がれる前にぽつりと呟いた。


「それは…アンタが巧すぎるからだよ」



   * * *


命じられていた任務を無事に終え、信玄への報告も済ませた佐助は、少し暇をもらう事を伝えてから奥州へと向かった。

といっても、佐助は正面から堂々と城に入れるような公認の立場ではないため、木立や屋根伝いでの隠密じみた来訪が常となっている。

(お邪魔しま〜す…っと)

一応胸の内ではちゃんと挨拶をしておいてから、佐助は城の外塀を軽々と飛び越えて敷地内に侵入した。

まずはいつも逢引を重ねている小十郎の屋敷に出向いてみたのだが、誰もいないのか行灯にも火が入っておらず、屋敷中が暗く静まり返っている。

(片倉さん、屋敷に戻ってないってコトは…まだ仕事中かな?)

小十郎と深い関係を続けている事実があるため、今まで城の天守付近に近づくのは、佐助としてもなんとなく気が引けて遠慮していた。

さすがに外周のような警備の隙間もほとんどないし、下手をして小十郎以外の誰かに見つかったら佐助単独の責任では済まなくなってしまう。

(任務ならともかく、逢引に来といて旦那や大将に迷惑かけんのは格好悪すぎるしなぁ)

もし小十郎が屋敷にいなかった場合はおとなしく帰宅を待つつもりだったのだが、
この城のどこかに小十郎がいるのだと思うと、それだけで身体も心も待ちきれないと疼いてしまう。

そこで佐助は、城の周りまでなら、と少しだけ足を伸ばしてみた。


 

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