Cool Blue
□sweet and sour -可愛いあのコは微炭酸-
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「政宗殿。相変わらずの息災なご様子、なによりでござりまする」
「お前も…逢いたかったぜ、幸村」
お互いの仲を表す言葉について、政宗は『恋仲』だと思っているのだが、実際にはまだ深い仲など程遠く、何度かキスを交わした事しかない。
…というのも、恋愛に疎くて恥ずかしがりな幸村には、政宗に初めてキスをされて「好きだぜ」と告白された途端、顔を真っ赤にしてそのまま甲斐まで逃げ帰ったという過去があったのだ。
だが、その後も逢うたびに政宗が自分の誠意を示し続けた結果…
今ではこうしてまた政宗に笑顔を見せてくれたり、軽いキスだけなら逃げずに受け入れてくれるようになっていた。
「それにしても、オレを元気づけるために幸村を呼ぶなんて、小十郎も気の利いた真似をするじゃねぇか。
じゃ、政務の前に早速元気づけて・・・」
「そこまでです、政宗様」
いつの間にか部屋に来ていた小十郎が自分の腕を挟んで政宗を遠ざけると、今度は身体を反転させて幸村に軽く頭をさげた。
「悪かったな、真田。
政宗様の我儘にわざわざお前まで付き合わせる事になって…」
「某ならばかまいませぬよ。
奥州の民が心穏やかに暮らすためのお役に立てるとあらば、この幸村も尽力を惜しみませぬ」
本当にそう思ってくれているのだろう、幸村は嘘のない笑顔で小十郎にそう告げた。
「それと…政宗殿」
それから、折角のキスのチャンスを小十郎に阻まれて苦々しい表情をしていた政宗にも言葉をかける。
「出来るならば、某も政宗殿に手を貸して差し上げたいのだが…中には奥州の機密に関わる内容もあるという事なので、某が手出しをするわけにもゆかず…申し訳ありませぬ」
「幸村…!」
それまでの渋い顔つきから一気に幸せそうな面持ちに変わり、政宗は感動の眼差しで幸村を見つめた。
(幸村…オレだけじゃなく、奥州の民の事まで…お前のそういう優しいトコが、またオレを激しく惚れさせるんだぜ…!!)
(他国の武将ながら、なんという立派な心がけ…政宗様に爪の垢でも煎じて飲ませて差し上げたい…)
二人の心中など少しも知らず、幸村は立ち上がって部屋の扉まで向かうと…開いた縁に手をかけ、政宗を振り返った。
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