Cool Blue
□sweet and sour -可愛いあのコは微炭酸-
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「――…政宗様。」
確実に機嫌が悪いと知れる小十郎の声に、政宗は話を聞かされる前から小さなため息をついてしまった。
心地好い午後の陽光が射し込む自室で物思いに耽っていると、突然小十郎が部屋に乗り込んできて政宗のそばに両膝をついたのだ。
「溜まりに溜まった政務の山、今日こそはすべて片付けていただきます。
…よろしいですね?」
(……やっぱりその話か…)
嬉しくもない予想の的中に、政宗はもう一度ため息を吐いた。
「でもよ〜…最近これといって興奮するような戦もしてねぇし、幸村も全然逢いに来ねぇし…」
だからストレスが溜まっていて何もやる気が出ないのだ、と言いたかったのだが、政宗の我儘に慣れている小十郎は至極現実的な言葉しか返してこない。
「つまり『退屈』なのでしょう?
政務をなさるにはうってつけの日かと思いますが」
「………」
的確な事ばかり言われ、政宗は反論の言葉をなくしてしまうと、心中で悪態をつきながらもとりあえず執務室に足を向けた。
(…くそっ、メンドくせぇな…適当に仕事してるフリでもして、スキを見て抜け出しちまうか…)
なんて不謹慎な事をぼんやりと考え、いかにもやる気がなさそうに大きな欠伸をしながら、執務室の扉を開けると――…
「政宗殿っ!!」
そこには幸村が、山と積まれた堆い書類のそばに座ってニコニコと笑っていた。
「・・・・・・幸村?」
思いがけない幸村の姿を見つけて政宗が思考を停止してしまっていると、幸村は自ら手を差し延べて部屋の中へと政宗を誘う。
「どうなされたのです?
さ、中へお入りくだされ」
「なんで…オレに逢いに来るなんて、一言も…」
元々礼儀正しい性格の幸村は、奥州を訪れる時には必ず先に信書を寄越していた。
だが今回政宗は、幸村からの信書も報告も受け取っていない。
「実は片倉殿が、政宗殿のために『さぷらいず』をなさりたいと申されましたので…
此度の訪問は政宗殿には内密にしておりました」
幸村は政宗の驚いた表情を堪能できてちょっとした悪戯が成功したような気分なのか、楽しそうに笑っている。
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