Cool Blue
□Strawberry on the Shortcake
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それは、政宗が上田城を訪れた時の事。
幸村は自ら茶店に足を運んで買ってきたという団子を、茶菓子として政宗に出していた。
「ここの茶店の団子はとても美味いと、最近巷でも評判なのでござるよ!」
机を挟んで座る幸村の前にも、政宗と同じ団子が皿に盛られている。
早速そのうちの一本を頬張りながら、幸村は至福だと言いたげな笑顔で政宗に話し続けた。
「ただ美味いだけでなくいろんな味もあって、買いに行くたびにどれにしようかと悩むほどで…――」
団子の話になると熱が入ってしまう幸村は放っておいて、政宗は団子を一本つまみあげると口に運んだ。
(Hum…確かに美味いな。…だが…)
「甘すぎぬのがまた逆に食欲をそそられるのでござろうな。
かくいう某も、もう幾度ここの茶店を訪れたか…今では茶店の主人ともすっかり顔馴染みで…――」
団子を食べながら楽しそうに雑談を続けている幸村をちらりと見遣ると、政宗は突然ガタッと音をたてて席を立った。
「ま、政宗殿?
いかがなされました?」
幸村の問いかけを無視して机の周りをぐるりと歩くと、政宗を見上げていた幸村の前に立ち止まって腰をかがめ、顎を掴む。
「…ちょっと黙ってろ、幸村」
そして、そのまま自分の顔を近づけて幸村の口唇にキスした。
「……んぅっ…」
口唇を離した政宗が隣に腰を下ろすと、幸村はとっさに身体をずらして少し距離を置こうとした。
だが逃げる前に政宗が幸村の腰にしっかりと手をまわしていたため、幸村はその場から動けなかった。
「きゅ、急に何をなさるのだっ!?」
「いや、別に。
お前がすっげぇ美味そうに団子を食ってっから、ちょっとムカついただけだ」
いくら政宗が相手でも、「ムカついた」なんて言われては幸村もあまりいい気はしない。
キスに照れていた自分を忘れ、少しムッとした声で政宗に訊き返した。
「それはどういう意味でござろうか…?」
政宗は手の届かなくなった自分の皿のかわりに幸村の皿から団子の串を取ると、それを口に入れた。
確かに幸村の言う通り、甘すぎない味はいくらでも食べられるような気にさせる。
「オレの作った団子の時より、美味そうな顔なんかするからだ」
「……は?」
政宗には「オレの作る団子が幸村を一番喜ばせられる」という自負があったのだろう。
それがこうして他の団子に幸村の至福の笑顔を奪われたため、大人気なく拗ねてしまったのだ。
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