Cool Blue

□七月七日の恋物語 -小十佐編-
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(…片倉さんと戦場で初めて会った時は、みるからに融通のきかなそうな堅物かと思ってたけど…
 ホント、人って見かけによらないよなぁ)

政宗が一度も佐助の相手をしない事をやはり申し訳ないと思っていたのだろうか、
小十郎は佐助が来訪するたびに何かとさりげなく気を遣ってくれていた。

そうして何度も奥州を来訪し、会話の数と二人だけで過ごす時間を重ねていくうちに、
佐助はいつの間にか小十郎と過ごす時間を『楽しい』と感じるようになっていた。

信玄が佐助を呼びつけて奥州行きを命じると、それだけで会うのが待ち遠しいとさえ思えてしまうのだ。

(こりゃあちょっと…ヤバい、かな…?)

そして『楽しさ』がやがて『恋しさ』へと変化してゆくのを、自身でもはっきりと実感していたのだが…

かといってそんな想いを素直に小十郎に伝えられるはずもなく、佐助はずっと胸の内に秘めたままにしていた。



   * * *


そんなある日、佐助はいつものように信書を携えて奥州へと赴いていた。

今日は政宗がすでに屋敷へ戻っていて不在のため、いつものように小十郎が信書を受け取ったのだが、
すぐに帰ろうとした佐助を小十郎が引き留め、労をねぎらうための軽い食事を振る舞う事になった。

「…でもさ、確かに少し腹は減ってるけど、本当に俺なんかがお呼ばれしちゃってもいいの?」

「何言ってんだ。伊達と武田はいまや同盟を結んだ味方同士、その味方の将に飯を振る舞うのに理由も遠慮も必要ねぇだろ」

小十郎にさも当然だとばかりにそう断言されると、佐助も納得するしかない。

「ま、正直…片倉さんの育てた野菜の味ってのは前から興味があったんだけどね。
 ウチの旦那も美味いって褒めてたしさ」

「真田だけじゃなく、お前もすぐに俺の野菜の虜になっちまうぜ。
 今のうちに覚悟しとくんだな」

冗談を言う小十郎の隣で佐助も愛想よく笑い返しながら、胸の内ではぼそりと呟いていた。


(…俺はもうとっくに、片倉さん自身の虜になってんだけどね)


 

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