Cool Blue

□七月七日の恋物語 -伊真編-
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『奥州と甲斐が正式に同盟関係を結んだ』と世間に公表されてから、すでに数週間が過ぎ去った或る日の夜。

政宗は数日前から幸村を奥州に招き、自分の屋敷に滞在させていた。


『伊達と武田が同盟を結んだきっかけが二人の恋仲にある』というのは今や周知の事実となっているため、
政宗が幸村と二人きりで日々の寝食を共にしていても、特に気に留める者もいない。

また、普段の政宗ならたまに面倒くさがる事もある内政の書類仕事も、
幸村が滞在している間は少しでも早く屋敷へ会いに戻るため、毎日マジメに終わらせていた。

その集中力ときたら小十郎に、
「真田がいるだけで奥州の治安が良くなるのなら、ずっと滞在してほしいものだ」
と皮肉めかして言われた事もあるほどだ。


(そりゃあオレだって幸村とずっと一緒にいられりゃ嬉しいし、いずれはそうするつもりだけどよ…)

今日も予定通りの時間に政務を終えた政宗は、幸村の待つ自分の屋敷へとまっすぐに足を向けていた。

(…でも今はまだそんな時期じゃねぇし、それに少しくらいは遠距離恋愛ってのも楽しんでおかねぇとな)

会いたい時に会えない切なさや淋しさ、それに一緒にいられる時間のかけがえのなさ…
離れているからこそ知る事のできるそういった感情も、必要だし大切にしたいと政宗は思っていた。

・・・とはいっても、実際は戦などで幸村に会えない日が長く続くと、
そんな殊勝な考えなどすっかり忘れていじけてしまう事も度々あるのだが。

(それにしても、互いに戦場で相対した途端に一目惚れしちまうなんて…
 やっぱりオレと幸村は最初から『運命』ってヤツで強く結ばれてたんだろうな)

屋敷の前に立って扉に手をかけると、それだけでもう出迎えの幸村の笑顔が待ち遠しくなってしまう。


「I'm home、幸村。いま戻ったぜ」

屋敷の中にそう呼びかければ、いつもならすぐに幸村が玄関まで出迎えに来るのに…
そのまま少し待ってみても、今日は出迎えどころか返事すらかえってこない。


 

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