Cool Blue
□七月七日の恋物語 -親就編-
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光の帯が夜空を明るく彩りながら流れる、七夕の夜。
元就は元親の訪問を受け、港に係留された元親の船の上にいた。
元親の部下は全員陸に追い払い――もとい、陸で寛ぐ自由を与えておいたため、
大きな船には二人の他に人影も人気もなく、静けさの中に波音だけが響いている。
さすがに普段土足で歩き回る場所に元就を座らせるわけにもいかないため、
床の上に布を何枚も重ね、その上にさらに綾絹を重ねて座り心地のよい敷物をつくり、そこに二人で腰を落ち着けていた。
「なぁ元就、あの空の川って『天の川』っていうんだろ?
スゲェよなぁ、小さな星が集まっただけであんなリッパな川ができちまうんだからよ」
元親が見上げながら指をさすその先では、月のない夜空に数多の星々が集い、壮大な光の川を描いている。
同じように元就も天の川を見上げていたが…その表情にはどこか皮肉めいたモノも混ざっていた。
「確かに美しくはあるが…織姫と夏彦にとってはこれほど疎ましい川もないのだろうな」
元就がそんな事を呟くと、元親は同意の頷きを返してくる…のかと思いきや、
不思議そうに眉をひそめて元就に訊き返してきた。
「オリ…そのなんとかって奴ら、お前の知り合いなのか?」
「…元親、まさか貴様…織姫と夏彦の物語を知らぬのか?」
「だから誰なんだよそいつら。俺は聞いた事も会った事もねぇぜ」
元親の様子から本当に物語を知らないのだと悟った元就は、途端に蔑むような表情になって元親に向けたため息を吐いた。
「・・・フッ。これだから無知な輩は…」
「仕方ねぇだろ!
知らねぇモンは知らねぇんだからよ!!」
元就の冷たい反応にちょっとムカッときた元親が話題を切り替える前に、
元就は優越に浸ったまま元親を軽く宥めた。
「まぁいい、ならば我が教えてやろう。心して聞くが良い」
元就は語りだす前に元親にわざわざ姿勢を正すよう強要してから、『織姫と夏彦の物語』をわかりやすく話してきかせた。
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