Cool Blue
□とらとりゅうの宵遊び
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甲斐と奥州を結ぶ街道から少し離れた場所に広がる、名前もない平原。
そこで早朝から繰り広げられていた戦に、もうすぐ決着がつこうとしていた。
蒼い稲妻を纏った刀が澄んだ音を立てて空高く弾かれ、槍の切っ先が首筋に冷たい鋭さを感じさせる。
「Shit…！！
今回はオレの負け、か…」
「良い勝負でござった。
やはり政宗殿は、某が唯一人の好敵手と認めた御方…」
穂先をおさめ、政宗に手を差し延べると、政宗は一瞬苦々しい表情を浮かべた後でその手を握り返した。
「Haッ、どう褒められようが負けは負けだ。
その事実が変わることはねぇ」
「では…先程の約束に間違いはありませぬな？」
幸村が問う視線の先で、政宗は地面に突き刺さっていた刀を引き抜き、一振りしてから鞘に納めた。
「あぁ、男に二言はねぇ。
アンタの好きにしな、幸村」
＊ ＊ ＊
朝からの一騎打ちの疲れをゆっくりと癒した、その日の夜。
幸村の屋敷、締め切られた一室の中で、甘い声が響いていた。
「うぁっ…あ、あっ…！！」
「政宗殿…その御姿、とてもよく似合っておりまするよ」
政宗は布団の上で四つん這いにさせられ、背後から幸村に何度も貫かれていた。
髪からは黒い猫の耳がピンと生え、持ちあげられた腰の尾骨の辺りからは同じ毛色の猫のしっぽが伸びて、幸村の動きにあわせてふわふわと揺れている。
「次は…あっ…オレが必ず、勝つ…からな…っ！」
「いけませぬぞ、政宗殿。
今宵の政宗殿は、某の愛猫…決めた言い付けは守っていただかねば」
「・・・ッ」
幸村に愉しそうに念押しされ、政宗は黙り込むと悔しげに口唇を噛んだ。
『たまには気分を変えるために、今夜の閨では勝った方の言いなりになる』
そういう条件で始めた真剣勝負なのだから、政宗には今さら文句を言う権利はないし、約束を違える事もできない。
それに、元はといえばこの条件を提案したのは政宗の方なのだ。
（幸村にはいつも焦らされたり言葉責めでイジめられてるからな…
今夜はオレが逆に焦らしまくって、普段の反省をさせてやる）
政宗にはそんな思惑があったのだが…肝心の勝負で負けてしまっては意味がないのだと、そう気づいたのは実際に負けてしまった後だった。
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