Cool Blue

□それでもやっぱり君が好き
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   * * *


――それから数刻が過ぎ、甲斐の上田城では。


「佐助! どこだ、佐助!」

佐助を捜して敷地内を歩きまわっていた幸村は、
庭のお気に入りの木の上で転寝をしていた佐助を見つけると、下から声をかけた。

目を覚ました佐助が欠伸を一つ洩らした後で枝から身軽に降りてくると、
それを待っていた幸村が手にしていた包みを佐助の方へと差し出す。

「すまぬが佐助、今からこれを持って奥州の長谷堂城へと遣いに行ってくれぬか?」

「長谷堂城…って、なんで?」

佐助に包みを受け取らせると、幸村は懐から一通の書簡を取り出した。

中身を読ませるつもりはないのか手紙をその場で広げたりはしなかったが、
切られた封の表には「伊達政宗」の名が書かれているのがはっきりと読み取れる。

「先ほど政宗殿からこの手紙が送られてきたのだが…その中に、先の戦の事も書かれていてな」

「戦って、何日か前に伊達軍が勝利したってヤツ?
 聞いたハナシじゃ、最後はちょっとだけヤバかったらしいけど…」

幸村は佐助の質問にまとめて一度で頷き返したが、何か心懸かりでもあるのかその表情がわずかに曇っている。

「なんでも、その時に片倉殿が戦場でかなりの怪我を負われ、今も容態があまり思わしくないのだとか…
 しかし俺は今大事な用があって甲斐を離れられぬから、かわりにその見舞いの品を奥州へ届けてほしいのだ」

「そりゃ、俺は別にいいけどさ…」

気のせいか、幸村の話を聞いているうちに佐助は少し気がそぞろになっているようだった。

幸村はそんな佐助の様子を少しの間眺めていたが、さりげなく会話を続けて佐助の注意を自分へと引き戻す。

「それと、片倉殿はご自身の怪我のせいで周りに迷惑をかけている事をひどく気にしているらしくてな。
 政宗殿も心配しておられるゆえ、できれば佐助なりにうまく励ましてやってもらえぬか?」

「…りょーかい。
 んじゃ、早速行ってくるよ」

佐助は包みを落とさないように抱えなおすと、軽く地を蹴ってその場から姿を消した。


 

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