Cool Blue

□それでもやっぱり君が好き
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――奥州、長谷堂城。

数日前に戦を勝利で終えて凱旋した時は夜まで賑やかな声で満ちていた城内も、
今では普段の落ち着きを取り戻しつつあった。

戦の興奮を楽しげに語り合う者達が未だちらほらと見受けられていたが、
その中にただ一人だけ…凱旋以来、まだ一度も笑顔をみせていない人物がいる。


「………」

朝早くから小十郎が自室で格子窓のそばに腰かけ、城の外を眺めながら考え事に耽っていると、
静かに扉を開けて政宗が入ってきた。

「…なんだ、また起きてんのか?
 怪我してる時くらいはおとなしく寝てろよ」

抜け殻となっている布団の方をチラリと見遣りながら呆れ気味の口調で政宗がそう言うと、
小十郎はその場で畏まって頭を垂れた。

「政宗様…申し訳ありません。
 この小十郎、政宗様の背中を預かっておきながら…大事な所で政宗様のお役に立てず…」

声は静かだったが、膝の上で強く握りしめられた拳を見ていた政宗は、
「気にしてねぇさ」という笑顔と優しさをこめて小十郎に言葉を返した。

「Don't worry、小十郎。
 …当分は戦の予定もねぇし、今は特に忙しい時期ってワケでもねぇんだ。
 だから、お前も今のうちにゆっくり休養を取りな」

先の戦では無事に勝利を収める事ができた伊達軍だが、味方の兵がまったくの無傷というわけにはいかなかった。

戦が終盤にさしかかろうかという頃、予想外の伏兵に不意を突かれて小十郎も負傷してしまい、
こうして城へ戻ってからも政宗に書類仕事以外に携わる事を禁じられていたのだ。

「しかし…私のせいで、今でも政宗様に…それに、皆にも迷惑を…」

「何言ってんだ。お前には感謝こそすれ、誰も迷惑だなんて思っちゃいねぇさ。
 ・・・それじゃ、ちゃんと寝てろよ。言っとくがコレはお前への正式な命令だぜ、小十郎」

そう言い置き、枕元に置いてあった厚い書類の束を手に取ってから小十郎を部屋に残して扉を閉めると、
政宗はそのまま少し思案顔になって宙を見上げた。


(Hum…コイツはどうやら、甲斐から『特効薬』を取り寄せてやる必要がありそうだな)


 

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