Cool Blue

□比翼の鳥
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「…次に生まれるなら…鳥になってみてぇな」

政宗がぽつりと零した呟きを拾った幸村も、地面に両手をついて空を仰ぎ、
悠然と空に大きな円を描く鳶の姿を眺めている。

「鳥…でござるか…
 政宗殿なら、きっと雄々しく力強い鷹が似合うのではないか?」

「ならお前は雲雀だな。
 尖ってる髪型とか、茶色い毛色とか、あと囀りがうるせぇトコなんかもそっくりだ」

「なっ…!
 某が一体いつうるさくなど――ッ」

闘争心に火がつくと叫ばずにはいられない自分の性格をまるでわかっていないのか、
幸村は不平そうに政宗に抗議しようとした…が、それよりも先に政宗が訂正の言葉を口にする。

「真に受けてんじゃねぇよ、冗談に決まってんだろ。
 …それにな、雲雀の鳴き声は綺麗すぎてお前とは似ても似つかねぇよ」

「…それはそれで、酷い事を言われているような気がするのだが…」

どうも釈然とせずに首をひねっている幸村の隣で、政宗は声を立てずに笑った。
その屈託のない笑顔は、いつも幸村を無条件で降伏させてしまう。

「政宗殿のそれは…反則でござる…」

「Ah? 何か言ったか、幸村?」

「別に…何も…」

幸村は拗ねているのか照れているのかわからない複雑な表情を浮かべ、
政宗はそんな幸村を不思議そうに眺めていた。


空には相変わらず、青色を背にした鳶がぽつんと浮かんでいる。


「鷹になってみるのも悪くねぇが…
 どうせ鳥に生まれ変わるなら、比翼の鳥ってのがいいな」

「ヒヨクノトリ?」

聞き慣れない名の鳥の姿がうまく想像できなかったのか、幸村が首を傾げて訊き返してくる。
政宗は先に「空想の鳥だけどな」と前置きしてから、幸村に比翼の鳥の話を聞かせてやった。


「比翼の鳥ってのは、雌雄で片方ずつしか翼を持ってねぇ鳥のコトさ。
 空を飛ぶ時だって一羽じゃ飛べねぇから互いの羽に頼らなきゃならねぇ、そういうみっともない鳥だよ」


だが「みっともない」と言った政宗の声音には、憐れみや蔑みのような感情は少しも含まれていない。
そこに込められていたのは、どちらかというと憧れに近い響きだった。


 

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