Cool Blue

□比翼の鳥
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――それはとある日の、誰も知らないとある場所。



政宗と幸村は、なだらかな丘の斜面に寝転がって一緒に空を見上げていた。
政宗は自分の両腕を頭の下で組み、幸村はその隣で上半身を起こしている。

道中の危険を避けるために、鎧の類いは軽装ながら二人とも身に纏っていたが、
それぞれの武器である六爪と二槍を携えている様子はない。

それらは今だけは無用だと、二人から少し離れた場所に繋いである馬に荷物と一緒に括りつけられていた。


そしてその事実は、政宗と幸村が敵同士という立場でありながら、いかに親しい間柄なのかを物語っている。


互いに供もつけず、行く先も報せず。
会いたくなった時に誰にも知られないように連絡を取り合い、こうして二人きりで一時の逢瀬を楽しむのが、
いつからか二人にとって欠かせない時間となっていた。



   * * *


優しく眠気を誘うようなあたたかい午後の陽射しの中、二人はたわいもない話に花を咲かせていた。

時折会話が途切れる事もあったが、相手が隣にいると思うだけで、
そこには幸せな時間がかわらずに流れ続けている。

普段の建前や闘争心を武器と一緒に遠くへ置き去りにしてきた今の二人には、
ただ純粋に相手を愛しいと想う気持ちだけしか残っていなかった。


「気持ちいい風だな…」

わずかに髪を揺らす程度の風が、二人の肌をふわりと撫でては何処かへと去ってゆく。

仰向けに寝転んでいる政宗の視界の先では、鳶が一羽、雲のない青空を気流に乗って気持ち良さそうに飛んでいた。

「……」

政宗が地上から空に手を伸ばして小さな影を掴んでみても、鳶は指の隙間からするりと抜け出してしまう。

今の政宗には触れる事すらできない、自分よりもちっぽけなはずのその存在は、
けれど政宗の胸にいつもひとつの憧れを抱かせていた。


 

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