Cool Blue

□流れ星とひざマクラ。 -親就編-
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「注げ。…少しくらいなら、貴様に付き合ってやる」

その言葉を聞いた途端に、元親はさっきまでの悲しげな顔もどこへやら、
手にしていた杯を放り出すと満面の笑顔になって元就をぎゅうっと抱きしめた。

「元就ィィッ!!
 やっぱり俺はお前が大好きだぁぁぁ――っ!!!」

「ええいっ、叫ぶな!! 抱きつくな!! 暑苦しいではないかっ!!」

元就は元親の両肩をつかんで自分から引き剥がそうとしたが、元親も負けじと抱きつく腕に力を込める。

「そんなに照れんなって!
 心配なんか要らねぇぜ、お前の気持ちはこの俺がちゃんとわかってるからよ!」

「我の気持ちがわかるのならば、今すぐに離れぬか!」

「ンなコト言ってっけど、本当はお前だって嬉しいと思ってんだろ?
 あーもー、このままいろんなトコにいっぱいチューしてやろっかなー♪」


「・・・調子に乗るなっ!!」


めきっ・・・、とニブい音を立てて元就の手刀が元親の眉間に直撃すると、
元親は口から生気のようなものを吐いてぐったりとくずおれ、ようやく元就は腕の中から解放された。

「貴様という男は…少し気を許すとすぐに調子に乗りおって…」

元就はぐったりしたままの元親を気遣う事なくぞんざいに放り投げておくと、
浴衣の襟を直してから傍に転がっていた自分の杯を拾いあげ、手酌で酒を注いで口をつけた。

「・・・ふむ…上物と言っていたが、今宵の酒は一段と美味いな」

しかし、手にした瓶を何気なく眺めていると、
そこにはいつも元親が『土佐土産』と称して安芸に置いていく酒瓶の中の一つと同じ名前が記されていた。

それでも、独りで飲んでいる時より、今の方がより美味しいと感じてしまうのは、
愛しいと想っている相手が自分の傍らにいるからなのだろうか?

(…『愛しい相手が傍に』…か。
 確かに…そうかもしれぬな)

元就は元親の手にそっと自分の手を重ねると、先程までは少しも見せなかった優しい表情で微笑みながら、二杯目の酒も美味そうに飲み干した。


 

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