Cool Blue

□素直なキモチ。
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・・・戦国時代の最中にあって、東の地で甲斐の武田信玄、奥州の伊達政宗たちが勢力を伸ばしている頃、
西の地でも同じように、数人の武将たちがめざましい勢いで台頭し、その名を全国へと広げ始めていた。




その西の勢力の一人でもあり、中国地方を治めている毛利元就は、
この日も高松城の自室で日本地図を広げ、次の戦のための策を練っていた。

地図にはすでに墨で幾つかの名前と印が書き込まれていたが、
元就の視線は、未だ印を刻めない場所…つまりまだ攻略できていない土地、四国へと注がれている。

「……」

元就は今までにも幾度となく、四国に海戦を仕掛け、
その度に互角の勝負を繰り広げてきた。

…だが、最近は四国に戦を挑むことを躊躇うようになっている自分がいる事に、元就は気付いていた。


原因はわかっている。
四国の統治者にして海賊を名乗る男、長曾我部元親――彼の存在だ。


「……長曾我部…元親…」

その名を口にする時、元就は決まって思い出してしまう、一つの過去があった。




――何度目かに挑んだ四国との海戦の際、毛利元就と長曾我部元親は船上で対峙していた。

始めは元就側が優勢だったはずなのだが、気付けば勝負は元親側に追い風が吹き始めている。

その事に互いに気付いているからだろうか、
厳しい表情を隠せない元就に比べ、元親はいつもと変わらない悠然とした口調で話しかけてくる。

「懲りずによく来るなぁ、あんたも。
 そんなに俺の事が気にくわねぇのかよ?」

「…黙れ。戦に無駄口を持ち込む輩は好まぬ」

元就の無感動で冷ややかな視線を受け、元親は軽く肩を竦めた。



元就は以前から、目の前にいるこの男が苦手だった。

元親が備えている実力ももちろん脅威的だったが、
なによりその性格に自分とは相入れないものを感じていた。

元親は元就と刃を交えている時でもあまり殺気立った姿をみせず、
それどころかいつも妙な馴れ馴れしさで、元就に構おうとすらしてくるのだ。


・・・はっきり言って、この長曾我部元親という男は元就が一番苦手とする種類の人間だった。


 

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