Cool Blue

□或る雪の日に
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(政宗様…こんなに冷えてしまわれて…)

小十郎は無意識に手を伸ばし…政宗の身体に触れようとして、
けれど触れてしまう前にその手を止めてしまった。


こういう時、すぐにでもその身体を抱きしめられたなら。
自分の体温で少しでも暖めてやれたとしたら、どんなに楽でどんなに幸福だろうと思う。

…けれど、それは小十郎には決して出来ないのだ。


政宗が本当に欲しているのは、小十郎ではなく、違う男の腕なのだと知っているから。


「……」

伸ばしかけた腕は、政宗を抱きしめる事なく、
無造作に肩に掛けていた羽織を掴んできちんと掛け直させただけだった。

「…あまり外の風にあたられては傷に障ります。
 まだ静養中の身なのだという事をお忘れになりませぬよう」

「わかってるさ。
 こんな時にまでお前に心配かけるつもりはねぇよ、小十郎」

いつも戦場で小十郎に心配ばかりかけさせている自分の戦い方を、じゅうぶん承知しているのだろう。
政宗は少し皮肉げにそう言いながら笑ったが、それでもまだ何かを想うように雪景色に目を向けていた。


「……遠いな…」

ふと零した呟きは、誰に届く事もなく、雪と一緒に地面へと舞い落ちてゆく。

(今、傍にアイツがいたら…こんな寒さなんて感じるヒマもねぇくらい、きっと…)


・・・ぬくもりが欲しい。
この冷たく凍えた指先にまで赤く熱い血を巡らせてくれる、唯一つの存在が。


政宗は指を組んだ両手を額に当てて、目を閉じ、静かに念じてみた。

(オレに会いに来い・・・幸村)

その願いは、もしかしたら呟きと同じように雪に埋もれてしまうだけなのかもしれない。
…けれど、政宗は幸村に必ず届くと信じて疑わなかった。

(会いたい時に傍にいないなんて、このオレが許さねぇ。
 ・・・だから来やがれ、真田幸村)


この冷えきった身体と心を両腕に抱きしめ、暖められるのは、
唯一人――真田幸村、お前だけなのだから。


 

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