Cool Blue

□Words of...?
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――時刻が昼を少し過ぎた頃、幸村はようやく長谷堂城へと辿り着いた。


「たのもぉ――ッ!!」

元気よく幸村が叫ぶと、すぐに頭上から聞き慣れたからかい気味の声が降ってくる。

「Hey! 久しぶりじゃねぇか、真田幸村!
 単騎で来るたぁ、そんなにオレが恋しかったのか?」

いきなり図星をグサリと貫かれ、幸村は正直に頬を赤く火照らせながらも勢いよく反論した。

「こっ…恋しいなどあるわけが…ッ!!」

「そーかい。じゃあ帰んな」

「うむ!
 ……えぇっ!?」

まさか率直に「帰れ」と言われるとは思っていなかったのか、幸村は一度頷いてから変な声をあげた。

政宗は階下にいる幸村にも見えるように、手にしていた分厚い紙の束を叩いてみせる。

「オレぁ今忙しいんだ。
 悪ィがお前の相手してるヒマなんかねぇんだよ」

「く…くぬぅ…っ」

だが幸村も、はるばる甲斐から政宗に会いにきたのに、
門前払いされたからといって素直に帰りたくはないのだろう。

「ならば…政宗殿が忙しくなくなるまで待たせてもらおう…」

明らかに少しテンションの落ちた幸村に適当に手を振ってやってから、
政宗は城内に引き返した。


(わざわざ奥州まで来る行動力はあるくせに、たかだか数文字が言えねぇんだよな。
 相変わらず、積極的なのか消極的なのかわかりゃしねぇ)

さっき「忙しい」と言ったのは、決して嘘ではない。
ただ、素直に「恋しい」と言えば、急ぎ以外の政務は後回しにして相手をしてやってもいいと思っていたのに。


(そういやいつだったか、初めてキスしてやった時には散々『破廉恥』だって言われたっけな。
 …今じゃテメェの喘ぎ声の方がよっぽど破廉恥だってのに)

(まぁそれでも、せっかく向こうから会いに来たんだ。
 今夜はどんなイイ声で啼かせてやろうか・・・?)


幸村が『待ち侘びて城を去る』という選択肢を選ぶ可能性など初めから考えていないのか、
政宗は愉快そうに独りで微笑いながら、政務を終えた後の事を考えていた。


 

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