Cool Blue
□TSUINA:STRATEGY
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「そんでもって、さらった姫さんを自分の根城に連れ込んでから、無理やり自分のモノにしちまうんだぜ」
「…ならば、」
元就は元親と至近距離で視線を交わす照れ臭さに耐えられなくなったのか、ふい、と顔を逸らしてしまった。
「ならば…貴様は悪い鬼などではない」
「なんでだよ?」
「…貴様は『無理やり』と言ったが、我は…とうに、貴様の…」
それ以上はとても口に出せなかったのか、元就は言葉を詰まらせてしまった。
「…いや、やっぱり俺は悪い鬼だと思うぜ」
「?」
理由を目線で問う元就に、元親が愉しそうな…それに少し意地悪そうな笑顔で答えた。
「なにせ、さらった姫さんを船の上で毎日どう『イジめて』やろうかって、もうそんな事を考えてるんだからな」
手始めに口づけしようとすると、それを察した元就は寸前にまたも顔を背けて躱してしまった。
「…降ろせ、元親」
「なんだよ、今さら俺から逃げようったってそうはいかねぇぜ?」
「…そうではない。
このような姿で、他の者達の前に出てゆくわけにはゆかぬのだ」
元就は常に自身の冷酷な面を見せつける事で軍の統率を取っているため、こんな甘えた姿を見られては軍の士気が著しく乱れてしまうのだろう。
それを知っている元親は、おとなしく元就を降ろしてやった。
元就は今までの甘い雰囲気など断ち切るように元親に背を向け、普段の冷静さを纏った声音に戻して訊ねてくる。
「出航はいつだ?」
「予定は明後日の朝だ。まぁ、それまでに良い海風が吹けばちょいと早めるかもしれねぇけどな」
「…手筈を整える。暫く待て」
すでに元就の中ではある程度計画が練り上がっているのか、迷いのない足取りで部屋を後にした。
その背を見送っていた元親は、まだ篭に残る豆を片手に掬うと、その手をゆっくりと傾けてパラパラと豆を篭にこぼした。
「『鬼も内』…ねぇ。
カワイイ事を言ってくれるじゃねーの」
元就に虐げられる事も多い元親だが、それも素直になれない元就の性格ゆえなのだと今ではちゃんと理解していた。
それに、完璧主義な元就に残る不器用さがますます可愛いと思わせるのだ。
(さっきは上手く躱されちまったが…
海上の覇者ってのがどっちなのか、我が儘な姫さんに教えといてやらねぇとな)
元就とはまた違う計画を胸に秘め、元親は愉しくなりそうな船旅に思いを巡らせて独り微笑っていた。
End★
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