Cool Blue

□TSUINA:STRATEGY
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「ふん。掠奪するしか能のない海賊の分際で何をぬかすか」

「ぐっ…!」

元親が少しでも切り返しに詰まったとみるや、元就はさらに調子づいて元親を『鬼』扱いする。

「わざわざ鬼遣らいの日に鬼の方から出向いてくるとはな。
 いい覚悟だ…好きなだけ我が豆をぶつけてやろう」

それは突然の元親の訪問を喜んでいるものの、素直にそう言えない元就なりの照れ隠しだったのだが…
手元の枡に豆が残り少ないと知った元就が篭から掬おうと背を向けると、元親のいじけた声が耳に入った。

「…ンだよ…しばらく遠征に出向く事になっちまったから、その前にせっかくこうして逢いに来たってのによぉ…」

元親がぶつくさと零した文句を聞いた途端に元就はピクッと肩を揺らすと、
まだ後ろを向いたままでさりげなく訊き返す。

「・・・遠征?」

「あぁ、ちょいと訳アリで南へな。
 つってもまだ何ヵ月かかるかわかんねぇから、その前に少しでもお前の顔を拝んどこうと思ってよ」

何ヵ月も、と言うわりには、元親の態度にも声にもそれほど淋しがっている様子がない。

それに気づいた元就はしばらく無言でいたが、
やがて元親にもほとんど聞こえないくらいの小さな声でぽつりと呟いた。

「…貴様はやはり悪い鬼だ」

豆を掬った枡を両手でにぎりしめながら、元就は独白を続けている。

「何ヵ月も我を独りぼっちにしておいて、それでも平気でいられるなど…
 所詮我はその程度の存在でしかないという事か…?」

元就はなおもぶつぶつと呟いていて、そんな元就の淋しそうな背中を元親は苦笑混じりに眺めていたが、
歩く音も立てずに元就に近寄ると、その身体を軽々と両腕に抱えあげた。

「なっ、なにをする!」

「どうやら俺は悪い鬼みてぇだからな。
 悪い鬼って言やぁ、愛しい姫さんを城から力ずくでかっさらうモンだろ?」

元就を抱きかかえたままでさらに顔を近づけ、身体を疼かせるような甘い囁きで耳を撫でる。


 

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