Cool Blue

□TSUINA:STRATEGY
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今日は『鬼遣らい』――人が住まう場所に潜んでいる鬼を祓い、かわりに福を呼び込むための日だ。


元就は早速炒った豆を篭に用意させると、それを枡に移して豆撒きに興じていた。

「福は〜内〜…」

格子窓に背を向け、部屋の中へとにぎった豆をぱらぱら撒くと、
今度は格子窓の方へ身体を向けながら、もう一度枡の上に手を置いて豆をにぎりしめる。

「鬼は〜…」

そのまま元就は豆を部屋の外へと撒こうとしたが、ふと何かが気になったようにその手を止めた。

「……」

それから先程よりも幾分か小声になると、にぎっていた豆を城の外ではなく自分に向けて、ぱらぱらとひかえめに振りかける。

「鬼も…内…」

唐突に思いついた自分の行為にすっかり満足したのか、元就は一人静かに微笑っていたが、
そんな元就の背後から突然聞き馴染んだ声が飛んできた。

「おいおい、何やってんだよ元就。お前、鬼遣らいの豆の撒きかたも知らねぇのか?
 鬼は部屋の外に追い払わねぇとダメなんだぜ」

「ッ!!」

ビクッと身体を揺らして元就が声の聞こえた方を振り返ると、
いつの間にか部屋に入り込んでいた元親が、妙にニヤつきながら壁に背をもたれさせていた。

「よぉ。逢いたかったぜ、元就」

「・・・鬼は」

元就は元親の挨拶など聞いてもいないのか、枡の豆をひとつかみ、握りしめたかと思うと。

「そとぉぉぉおッ!!!」

「いだだだだだっ!!!」

あらんかぎりの全力で投げつけられた豆は、一粒ずつが明確な殺意を孕んで元親にめり込んだ。

「痛ってぇ〜…いきなりなにしやがるっ!!」

炒られた豆は意外と殺傷能力が高く、あまりの痛さに元親はちょっと涙目になりながら抗議したが、
当の元就はまったく悪気のない表情で元親にビシッと人差し指を突きつける。

「『鬼』は外へ追い払えと言ったのは貴様だろう!」

「追い払うのは人に悪さをする鬼だろ!
 俺は悪さなんかしてねぇよ!」

しかし元親が叫んでみても、元就は軽く鼻を鳴らしてみせただけで相変わらず優位な表情を崩さない。


 

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