Cool Blue
□コ ト ノ ハ 。
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「…何か企んでるのか?」
「企んでるだなんて、やだなぁ。片倉さんじゃあるまいしさ」
佐助は廊下を先に立つと、私室へと足を向かわせた。
小十郎はそのすぐ後ろをついて歩きながら、さらに質問を重ねる。
「…今のはどういう意味なのか、訊いてもかまわねぇか?」
「俺に訊くより、自分の胸に手を当てて訊いてみた方がいいんじゃない?」
小十郎は言われたように手を当てたりはしなかったが、ひと通り想像を巡らせてみて…最後に小さく首を捻り、それ以上考えるのをやめてしまった。
(…思い当たる節がありすぎて、どれの事だか見当がつかねぇな)
* * *
「ま、のんびりしていってよ。
今日は泊まりなんだし、話し相手くらいなら俺が付き合ってあげるからさ」
私室へと小十郎を招き入れた佐助は、適当な場所に座っておくように声をかけた。
それから二人分の小皿と湯呑をのせた盆を持ってくると、それを間に挟んで自分も隣に席を占める。
「これさ、俺が好きな茶店の豆大福。
絶品だから片倉さんも食べてみてよ」
小十郎は先に熱い茶に口をつけると、まだ身体に残っていた会談の緊張を深い呼吸と一緒に吐き出した。
「…そうだ、後で真田に託けを頼む。
政宗様のお怪我は順調に回復しているから、心配は無用だとな」
「いいけど…なんでさっき中庭で会った時に直接言わなかったの?」
「…今思い出したんだ」
「ふぅん?」
佐助は自分の豆大福にかぶりつくと、幸せそうに口をモグモグと動かしていたが…
二口で大福を食べ終わり、お茶で口の中をすすぐと、急に小十郎に質問を投げかけた。
「片倉さん、さっきからずっと同じ考え事してるだろ」
「………」
無言で見つめ返してくる小十郎の態度を肯定と受け取った佐助は、残っていたお茶もきれいに飲み干した。
「俺だってそれくらいは見抜けるよ。
忍ってのは観察眼も大事な資質の一つだからさ」
そこで会話はぷつりと途切れてしまい、佐助からそれ以上詳しく訊ねるような真似はしてこなかったが…
少しの沈黙が流れた後、今度はその意図を汲んだ小十郎が口を開いた。
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