Cool Blue
□奥州双竜恋仲自慢(惚気)合戦
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――奥州にある政宗の居城、その屋敷の一部屋で、政宗と小十郎は穏やかな午後のひと時を過ごしていた。
小十郎が物静かに読書をしているのに対し、政宗は気だるげに肘をつき、書き物をするつもりで置いておいた紙に筆でぐるぐると丸を書きつけている。
「幸村のヤツ、早くオレに会いに来ねぇかな〜…」
(…また始まったか…)
少し顔を上げ、いかにもやる気のない政宗の姿を見てかすかにため息をつくと、小十郎は再び手元の本へと視線を戻す。
「武田は現在西方へと出陣中…すぐに終わるような戦ではない事は、政宗様も十分にご承知のはずでは?」
幸村が今度の出陣の旨を政宗に伝え、甲斐に戻ってからというもの、政宗が「幸村」の名を口にしない日など一日としてなかった。
毎日のように同じ愚痴を聞かされ続けていては、小十郎でなくともため息くらいはつきたくもなるだろう。
「ンなこたぁオレだってわかってんだよ。
けどよ、幸村に会いたいとか抱きしめたいとかキスしたいとか思うのはオレの自由だろ?」
「………」
その愚痴に常に付き合わされる自分の苦労も少しは考えてほしいものだ、と思いながら、それでも小十郎は我慢して政宗の文句を聞き続けた。
「それに今頃幸村だって、オレに会いたいとか抱きしめられたいとかキスされたいとか思ってるかもしれねぇじゃねぇか」
「………」
あまりにも自信たっぷりな政宗の言い方に、小十郎がどう返答するべきか悩んでいると、政宗が急に何かをひらめいて瞳を輝かせた。
「いや、きっと思ってるはずだ!
…ってワケで小十郎、オレは今からちょいと西へ様子見に行って来るぜ」
自分の思いつきが気に入ったのか、政宗は意気揚々と立ち上がった。
だがそちらには目を向けず、小十郎は最後まで読み終わった書物をパタンと閉じると、冷ややかな声で指摘する。
「政宗様。その前に一つお訊きしておきたいのですが…
以前も同じ理由で戦場へと向かったものの、血が騒いでそのまま合戦に乱入してしまい、結局武田に悪い心証を与えた事があったのをもうお忘れなのですか?」
「ぐっ…!」
痛いところを突かれて政宗が動きを止めてしまっても、小十郎はここぞとばかりに追及の手を一切ゆるめようとはしない。
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