Cool Blue

□良薬は口に苦く、適薬は唇に甘い -戦国編-
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「…まったく、厄介事を持ち込んでくれたものだな。
 今朝早く、お前を捜して斥候がこの城にしつこく探りを入れてきたんだぞ。穏便に追い返すのにどれだけ苦労したと思ってる」

「あらま、気づかれてたのか…まいったね、こりゃ」

「まぁそれでも、政宗様は「これで甲斐に貸しが作れる」と喜んでいたがな」

「えっ…いや、それはちょっと困るんだけど…ッ」

佐助の慌てる様子を黙って眺めていた小十郎は、ため息に似た呼吸を洩らすと佐助に向けて微笑ってみせた。

「安心しろ。そんな瑣事を貸しにしても気高い竜の名を貶めるだけだと説いたら、すぐに諦めてくださった」

「…さすが片倉さん。
 俺さ、片倉さんのそういう気遣い上手なトコ、大好きだよ」

佐助の何気ない一言に、小十郎がわずかに表情を変化させた。
…だがそれも一瞬で、佐助が気取るより先にもう元の表情へと戻っている。

「そのかわり、お前自身の口から理由を話してもらえるんだろうな?」

「…すごく情けない話だから、あんまり言いたくないんだけど…助けてもらった恩もあるし、仕方ないか」

佐助は長く続きそうな話の前に何度か大きく息を吸って呼吸を整えなおすと、ポツポツと話しはじめた。



   * * *


ここ最近、甲斐は軍備拡張や外交政策、領内の統治に追われ、佐助も戦や諜報活動など、休養を取る間もないほどに多忙な日々を過ごしていた。

「まったくさ…大将も旦那も、忍使いが荒いったらないよな。
 これで給料は据え置きなんだから、もうホントに嫌になっちゃうよ」

最初はそんな余裕混じりの愚痴も言えたのだが、長雨の中での偵察行動や蓄積し続けた疲労が祟ったのか、やがて佐助は自分が本格的に体調を崩し始めている事に気づいた。

(こりゃあ…今回はちょっと、本気でヤバイかな…?)

だがそんな中、甲斐にとって重要な情報が記された密書が敵国に渡りかけているという火急の報らせを受けた佐助は、身体の不調を押し隠し、自らすすんで密書の奪取役を名乗り出た。


 

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