Cool Blue
□良薬は口に苦く、適薬は唇に甘い
2ページ/7ページ
秋も深まり、時折強く吹く風が肌寒さを感じさせるような、ある某日。
政宗は朝からほとんどの時間をベッドの上で過ごし、今も仰向けに寝転がって天井をぼんやりと見上げていた。
(あ〜…くそ…)
熱で頭がフラフラし、咳をするたびに喉も痛みを訴えてくる。
昨日の朝から妙な寒気みたいなものを感じてはいたのだが、同じ日の夜には本格的に熱があがり始め、今朝はさらに喉の痛みと咳まで増す有様となっていた。
(情けねぇよな…このオレが風邪なんかでここまでダウンしちまうなんて…)
カーテンの隙間から零れている陽射しには、淡いオレンジ色が混ざりはじめている。
本当なら今頃はこの陽光の中、恋人と一緒に下校の道程を楽しく歩いていたはずなのに。
(…そういや、今日はアイツ…まだ一度も…)
熱のせいで思考がまとまらない頭で、それでも政宗が考えを巡らせようとしていた、その時。
『ピンポ〜ン♪』
玄関の方から、来客を告げる軽快なチャイム音が響いてきた。
(こんな時にめんどくせぇな…このままやり過ごすか…)
だが政宗の思惑に反して、チャイムは尽きない波のように何度も鳴り続けた。
『ピンポ〜ン♪』
『ピンポ〜ン♪』
『ピンポ〜ン♪』
『ピンポ〜ン♪』
『ピンポ〜ン♪』
(くそ…ッ!!)
苛立ちにようやく身体を起こした政宗が、フラフラの足取りでドアを多少乱暴に開けると――
そこには薄々予想していた通りの顔が、不安をいっぱいに浮かべて政宗を見つめ返していた。
「お前な…見舞いは要らねぇから来んなって言っといただろうが…!」
一気に疲れが出た政宗とは対照的に、携帯を握りしめた幸村はほっとした表情に変わった。
「しかし、朝から何度携帯を鳴らしてみても、一向に音沙汰がないので…政宗殿の身に何かあったのかと…」
(あぁ、そういや昨日幸村に電話したまま携帯を充電してなかったから、寝てる間に電源が切れちまってたのか…)
風邪のだるさで携帯にまで意識が回らなかったが、そういえば朝から一度も着信音の類いを聞いていない。
充電して電源を入れれば、それを待ちわびていた大量のメールが携帯に届くことだろう。
「…それはオレが悪かった。
ムダに心配させちまったな」
自分の過失をすぐに認めて謝った政宗に、幸村はぶんぶんと首を横に振り、その首をうなだれさせた。
[Cool Blueへ戻る]