Cool Blue

□良薬は口に苦く、適薬は唇に甘い
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秋も深まり、時折強く吹く風が肌寒さを感じさせるような、ある某日。


政宗は朝からほとんどの時間をベッドの上で過ごし、今も仰向けに寝転がって天井をぼんやりと見上げていた。

(あ〜…くそ…)

熱で頭がフラフラし、咳をするたびに喉も痛みを訴えてくる。
昨日の朝から妙な寒気みたいなものを感じてはいたのだが、同じ日の夜には本格的に熱があがり始め、今朝はさらに喉の痛みと咳まで増す有様となっていた。

(情けねぇよな…このオレが風邪なんかでここまでダウンしちまうなんて…)

カーテンの隙間から零れている陽射しには、淡いオレンジ色が混ざりはじめている。

本当なら今頃はこの陽光の中、恋人と一緒に下校の道程を楽しく歩いていたはずなのに。

(…そういや、今日はアイツ…まだ一度も…)

熱のせいで思考がまとまらない頭で、それでも政宗が考えを巡らせようとしていた、その時。


『ピンポ〜ン♪』


玄関の方から、来客を告げる軽快なチャイム音が響いてきた。

(こんな時にめんどくせぇな…このままやり過ごすか…)

だが政宗の思惑に反して、チャイムは尽きない波のように何度も鳴り続けた。


『ピンポ〜ン♪』

『ピンポ〜ン♪』

『ピンポ〜ン♪』
『ピンポ〜ン♪』
『ピンポ〜ン♪』


(くそ…ッ!!)

苛立ちにようやく身体を起こした政宗が、フラフラの足取りでドアを多少乱暴に開けると――
そこには薄々予想していた通りの顔が、不安をいっぱいに浮かべて政宗を見つめ返していた。

「お前な…見舞いは要らねぇから来んなって言っといただろうが…!」

一気に疲れが出た政宗とは対照的に、携帯を握りしめた幸村はほっとした表情に変わった。

「しかし、朝から何度携帯を鳴らしてみても、一向に音沙汰がないので…政宗殿の身に何かあったのかと…」

(あぁ、そういや昨日幸村に電話したまま携帯を充電してなかったから、寝てる間に電源が切れちまってたのか…)

風邪のだるさで携帯にまで意識が回らなかったが、そういえば朝から一度も着信音の類いを聞いていない。
充電して電源を入れれば、それを待ちわびていた大量のメールが携帯に届くことだろう。

「…それはオレが悪かった。
 ムダに心配させちまったな」

自分の過失をすぐに認めて謝った政宗に、幸村はぶんぶんと首を横に振り、その首をうなだれさせた。


 

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