Cool Blue

□夏の雲と手のひらの竜
3ページ/7ページ



「あの雲のようにふわふわしていて、簡単にちぎれて…口に入れると甘くとろけてしまう…」

もう一度感動に満ちた瞳で砂糖菓子を眺めた幸村は、その瞳をさらに輝かせて政宗に賛辞を贈った。

「さすが政宗殿!!
 これほどまでに某の願いと寸分違わぬ菓子を作ってくださるとは…」

「満足したか、幸村?」

「それはもう!
 このように不思議な食感で、しかも美味い菓子は初めてでござる!!」

幸村は指でつまんだり、ときには直接口をつけたりしながら、砂糖菓子の魅力を存分に味わった。
気持ちが素直に出てしまうのだろう、砂糖菓子を食べるたびに幸せそうな笑顔がこぼれている。

「…本当に美味そうに食うよな、お前って」

「む?」

呟きを拾って振り向いた幸村は、政宗が微笑いながらじっと自分を見つめているのに気づくと、あわてて砂糖菓子を政宗の方へと差し出した。

「某ばかり楽しんでしまい、申し訳ありませぬ。
 政宗殿も食べてくだされ!」

だが勧められた政宗は、浮かべていた微笑を「そういうつもりじゃなかったんだ」という苦笑いに塗り替えてやんわりと断った。

「悪ィな、幸村。実はオレ、その砂糖菓子はあんまり得意じゃねぇんだよ。
 だから味見も最後の仕上げだけで、後はほとんどアイツらに任せきりだったしな」

そう言って指をさした隣の部屋では、ずっと見つからなかった佐助と小十郎が細い呻き声を洩らしながらぐったりと倒れていた。

ひたすら砂糖菓子を試食させられ続け、二人とも喉元まで詰まった甘さに胸やけを起こしているのだろう。

「…そう、でござるか…」

政宗に断られた幸村は、少し残念そうに手を引っ込めた。

(こんなに美味いというのに…食べられぬとは、勿体ない…)

再び砂糖菓子を口に運びながらもそれを考え続けていた幸村は、ふいに政宗にも食べてもらうとっておきの方法を思いつくと、早速それを実践に移した。

「政宗殿っ!」

「Ah?」

幸村は小さくちぎった砂糖菓子を口唇にくわえると、それを政宗の方に突き出した。
キスを望むような幸村の姿勢に、政宗もすぐに反応をみせる。


 

[Cool Blueへ戻る]
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ