Cool Blue
□夏の雲と手のひらの竜
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(むぅ…。
政宗殿が菓子作りで忙しいのはともかく、佐助や片倉殿まで見当たらぬとは…)
手が空いていたら槍の鍛練に付き合ってもらおうかと思ったのだが、
佐助がいそうな部屋や庭の木を覗いてみても姿はなく、普段なら廊下や畑で見かける小十郎も今日は朝から姿を消していた。
(かといって城下へ出れば、茶店の誘惑に打ち勝つ自信もないし…こう手持ち無沙汰だと眠くなってしまう…)
だが政宗が自分のために菓子を作ってくれているのに、それをただ寝て待つというのもなんとなく嫌だった。
なにかする事はないだろうか、と部屋の中をゆっくり眺めてみた幸村は、ふと棚の上に目を留めた。
(…そうだ、これなら政宗殿に…!!)
そこに鎮座していたモノに会心の閃きを得た幸村は、早速嬉しそうに準備を始めた。
* * *
・・・それからさらに、二時間ほど経った後。
「Hey! 待たせたな、幸村!
ほら、コイツがお待ちかねの『雲みたいな菓子』だぜ!」
ようやく調理場から出てきた政宗は、幸村の前にサッと木の棒を差し出した。
そこには、入道雲のように白くふんわりとした菓子がたっぷりと巻きつけられている。
「ふおぉぉぉお…ッ!!」
幸村は政宗から木の棒を受け取ると、子供のように瞳をキラキラさせて菓子を見つめた。
「これは…まさに雲そのものではありませぬか!?
どうやってこのように摩訶不思議な菓子を作られたのだ!?」
「実は、外国の砂糖菓子に似たようなのがあったのを思い出してな。
そいつを参考にして作ってみたんだ」
「なんと…相変わらず政宗殿は博識でござるな…」
感心の眼差しを政宗と砂糖菓子に向け続け、一向に食べる様子のない幸村に、政宗は苦笑しながら菓子を勧めた。
「眺めるだけじゃ味はわかんねぇだろ。
早く食って、感想を聞かせてくれよ」
「…で、では…早速…」
指先につまんで恐る恐る引っ張ってみると、それは簡単にちぎれてしまった。
綿のようなかたまりを口にほうり込むと、舌にのせた途端に柔らかな甘さが広がりながら、軽やかにほどけてゆく。
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