Cool Blue 2nd

□しろとらさくら
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「悪いが、オレは男にヤラせる趣味はねぇぞ」

「……」

「三度めの否定はナシか。なら、こういうのはアリって事だな?」

政宗は枝に添わせていた手をさらに伸ばして幸村の襟を掴むと、ぐいっと引き寄せた勢いで口づけた。

「――…!」

それは手と共にすぐに離され、幸村は一瞬何事かと呆けてしまった後で一気に顔を朱に染め上げる。

「へぇ、オレが相手でもそんな反応するんだな。おもしれぇ」

「なっ、なにを!?」

「あいにくとオレもメンドくせぇだけの色恋になんざ興味はねぇが、お前が相手なら楽しめるかもしれねぇな?」

政宗は本気なのか冗談なのかをまったく読ませない微笑で幸村にそう告げ、口づけの余韻を確かめるように自身の口唇を撫でる。

「確かに桜は遠方からでも取り寄せるくらい好きだが…
 今わかったが、オレは花より団子だな。お前もだろ、幸村?」

「確かに団子は好きでござるが、某は団子ではありませぬ」

「Haッ、団子みてぇに甘い口唇しといて何言ってやがる」

からかうようなその言葉にも幸村がまた頬を赤くして、素直すぎる反応を政宗が面白がっていたが、ふと何かに思い当たったように顎に手を当てた。

「そういや、たしか桜の塩漬けがあったな。
 団子じゃねぇが、あれを使って餅を作ってやろうか?」

「なんと!
 桜餅は大好物でござるっ!」

幸村は甘味好きで誰よりも美味そうに食べ、作り甲斐があると思わせてくれるため、政宗も幸村が奥州に来ると手製の甘味を振る舞う事が多くなっていた。

「だが、ただ作って食わせるだけじゃフェアとは言えねぇし、オレとお前はいつでもevenじゃねぇとな。
 なら、餅一個につきさっきの一回でどうだ?」

「むっ…」

「あぁ、でもお前の場合、両手の指じゃ足りねぇくらい食うもんな。
 なら二個で一回にしてやろうか?」

「いや…政宗殿がそれを望まれるならば、某は手加減などされずとも受けて立つ所存でござる」

「…やっぱりお前は真面目だな。それでいて的外れだ」

キスに対して妙に積極的になっている幸村の態度がまたおかしくて、政宗が笑った。

「まぁ、少し時間がかかるだろうし、ここで白い尾とでも戯れて待ってろ」

「あ…政宗殿」

「Ah?」

屋敷に戻ろうとした政宗をとっさに呼び止めたものの、幸村は次の言葉が喉から出てこなかった。
政宗は首を傾げたものの、幸村の言葉を待たずにその場を立ち去ってしまう。

(政宗殿は桜餅を幾つ作られるつもりなのだろうか…
 いつもと同じ大皿に盛られていたら…その数だけ、政宗殿と…)

期待も込めてその先を想像してしまい、独り残された幸村は白い桜によく映えるほど顔を真っ赤に火照らせていた。




End★

 

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