Cool Blue 2nd

□想起 -4L×4B-
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日々どこかの領土で戦が巻き起こり、波乱と混沌とに充ちた或る時代。
その日も北の荒れ野では政宗が敵将の首筋に刃を突き付けて降伏を促し、一つの戦が終焉を迎えていた。



「今回のは、あまり手応えも面白みもねぇ戦だったな…
 無駄足とまで言う気はねぇが、この程度じゃオレの昂りを鎮める事も出来やしねぇ」

戦がもたらした高揚感の余韻に浸りつつも、少し不満そうに呟く政宗が踵を返そうとした、その時。

「――…?」

ふと覚えのある気配を感じた気がして、政宗は周囲の森から戦場に向けて突き出た高台の方を見上げた。
政宗のいる位置からは何も見つける事は出来なかったが、政宗はそちらを見据えたまま名前を呼ぶ。

「……小十郎」

「はっ」

「後は任せる。負傷した連中と投降した奴らの手当は手厚くな」

「…御意。
 して、政宗様はどちらに?」

小十郎の問い掛けに、背中越しに振り向いた政宗は、先の戦の不服など忘れて口端に楽しげな笑みを湛えていた。

「そいつを訊くのは野暮ってモンだぜ」



   * * *


森の中を抜け、高台までの道を馬に駆けさせた政宗は、適当な木に手綱を結わえて一緒に兜も預けると、その先へと歩を進めた。

見晴らしの良い高台の先には心地好い風が吹いて、そこに佇む先客の深紅の鉢巻きと長い髪を揺らして遊んでいる。

「――Hey、幸村。
 待ち合わせの時間に遅れちまったか?」

「政宗殿…やはり、某に気づいておられましたか」

「当然だ。お前だって、それがわかってたからオレを待ってたんだろ?」

幸村の様子からは、戦の偵察や密命を帯びているという雰囲気は感じられない。
今回は武田に関係なく、あくまで個人的な理由で政宗に会いに来たのだろう。

「…先程の勝ち戦、まことに見事な手腕でござりましたな」

「相手がちょいとばかり格下だっただけさ。
 お前が見物してたって知ってりゃ、もっとPerfectな勝ち方してやったのに」

実際に政宗の羽織には刀傷も見受けられず、言葉通りの余裕が窺い知れた。
幸村が見ていた限りでも、敵の大将ですら政宗に一爪しか抜かせられないようでは、最初から勝機など無いにも等しかっただろう。

「…だが、わざわざ祝いの言葉をかけてくれたわりには、あんまり嬉しそうってツラじゃねぇな?」

「……」

普段の幸村なら、政宗の勝利をもっと素直に喜んでいたはずだ。
そこにある一抹の懸念がなんなのか、政宗にも一つだけ思い当たる節があった。


 

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