Cool Blue 2nd

□tea break...
1ページ/2ページ



うららかな午後の陽射しが、カーテン越しに柔らかな暖かさを感じさせてくれる、そんなある休日。

小十郎は机上に家庭菜園の本を開いて黙々と勉強を続け、佐助はその背中に自分の背を寄り掛からせてパズル雑誌を解いていた。

それぞれの嗜好にあわせ、机の上には和菓子の皿と熱い煎茶の湯呑、佐助のそばにはお菓子の入った小さな籠とコーヒーのマグカップが置かれている。

「…ね〜、小十郎さん。
 『風邪には焼いた〇〇を首に巻く』って、なに?」

「『ネギ』だろう」

「そっか。ありがと」

佐助は自分にわからない問題があると背後の小十郎に訊ね、一つずつ空欄のマスを埋めていた。

すでにページの半分ほどは自分の字で埋まっていたのだが、次のキーワードを目で追った佐助はすぐに答えを書き込もうとして、その手を止めてしまう。

「う〜ん…」

「なんだ?
 今度のはそんなに難しい問題なのか?」

「まぁね。難しいっていうより、ちょっと納得いかないっていうか…」

唸り声を聞きつけた小十郎が佐助に問い掛けると、佐助は小十郎の首筋に抱き着くようにして背後から顔と両手を出し、畑作りの本の上に開いたパズル雑誌を被せた。

「ほら、ここの問題。
 『ファーストキスは〇〇〇の味』ってヤツ」

シャーペンの先でトントンと問題文をつつくと、小十郎は「そんな事も知らないのか?」と呆れ気味に息を吐いた。

「答えは『レモン』だろう」

「そうだよ。普通はね」

どうやら佐助も答えは知っていたらしいが、何に対して納得がいかないのか、不満そうに唸っている。

「…でも、おかしいなぁ。
 俺の時はそんなに爽やかな味なんてしなかったのに」

「なら、どんな味だったんだ?」

「それがさ、今でもはっきりと覚えてるんだけど…
 俺のファーストキスはレモンじゃなくて、甘いミルク味だったんだよね」

「それはお前があの時、ミルク味の飴を食べていたからだろう」

小十郎はさも当然だという言い方をしたが、その答えを佐助も期待していたのだろう。

「俺としては誰かさんが不意打ちみたいにキスしてこなきゃ、もっと思い出に残るような爽やかな味にしたかったんだけどね」

用意していた皮肉の針でチクリと刺された小十郎は、さらに追い討ちをかけられる前にさりげなく話題をすり替えた。


 

[Cool Blueへ戻る]
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ