Cool Blue

□良薬は口に苦く、適薬は唇に甘い
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「某はずっと政宗殿が心配で…授業中もいてもたってもいられぬほどで…
 返事があろうとなかろうと、どのみち今日は政宗殿に会いにゆくつもりでござった」

(…そうだよな。コイツはこういうヤツなんだよ)

風邪がうつると困るから会いに来るなと言っておいても、こうして家まで押しかけて来てしまう。
それが本心から政宗を心配しての行動だとわかっているから、政宗もこれ以上強くは言えないのだ。

(…にしても、オレが寝てるかもしれねぇとか少しは考えなかったのかよ)

先程の遠慮のないチャイム音攻撃を思い出し、重たい頭を抱えてため息を吐くと、幸村はうなだれた首をさらに深く俯けた。

「…お休みの邪魔をしてしまい、本当に申し訳ありませぬ。
 では、某はこれで…」

「…Wait、幸村」

足早に玄関から去ろうとした幸村の袖を掴み、政宗はつらそうに咳をしながらもわずかに笑顔をみせた。

「チャイムでオレをたたき起こした罰だ。
 帰る前に、オレが満足するまでしっかり看病していけ。いいな?」

いつもの口調でそう言ってくれた政宗に、幸村は一転してぱぁっと表情を明るくすると、大きく頷いた。

「承知いたした!
 この幸村、全力で政宗殿のために尽くしまする!」

幸村を部屋に招き入れ、玄関のドアを閉じながら、政宗は胸中で呟いていた。

(昨日は「来るな」って言っておいたが…
 結局オレも、心の中じゃ幸村が見舞いに来る事を期待してたんだろうな)

なにせ幸村の元気そうな顔を見ただけで、少しでも笑顔を取り戻せた自分がいたのだから。



   * * *


政宗がベッドに横になるのを待ち、そっと布団を被せてから、幸村は自身のやる気を表すように制服の袖を捲りあげた。

「政宗殿はゆっくりとお休みくだされ。
 では某は早速、身体が温もる粥などを作って…」

「Wait! Stop! Don't move!!」

せっかく掛けてくれた布団を跳ね上げ、政宗は幸村に足を止めさせた。
その勢いに気圧されたように、幸村は動きを止めて瞳を丸くしている。


 

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