1
□1日目
1ページ/1ページ
午前7:36…
ごく普通の住宅街
その中のとある普通の一軒家
朝の通勤、通学ラッシュに追われる他の家とはまた違い、その日だけは一際慌ただしさに包まれた私の家
「ハンカチとティッシュ持った?パスポートは?」
『持ったってば!
全く…私ももう子供じゃないんだから
心配しなくても大丈夫だよ』
私の心の内を表すかのように澄み切った青い空
今から旅立つには絶好の晴れ模様だ
今日は念願のイタリアに留学する日
この日のためにイタリア語も猛勉強したし、
バイトだって休みなく働いた
「そうね……
お母さんも空港まで見送りに行きたかったんだけど
急に仕事が入っちゃって…」
『気にしなくてもいいよ。
余計寂しくなっちゃうもん』
「体には気を付けるのよ。
向こうに着いたら知らせなさいね」
『もう、分かってるって
行ってきます』
変な人には気を付けるのよー!
なんて言ってるお母さんの言葉を聞き流し、
私は空港へ向かうべくタクシーへと乗り込んだ
これから始まる悪夢を予想するなんて、
私には出来るはずも無かった
もしも出来たならこんなことに
なるわけが無かったのだから
...NEXT