■高土本棚■

□想像妊娠
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「……ガキ、欲しくねぇか?」



プカァ…

憎らしい煙を吐き出す。
土方は煙管を持った高杉の手を睨み、それから煙を吐き出す口元に目線を移した。
やはり、鋭い目は睨みあげたまま。

高杉はその目線に気付き、隻眼を向けた。

「あ? 何睨んでんだ?」
「……プカプカプカプカ…よくもまァそんな美味そうに吸えるなぁ、てめぇ…」
「んだよ、吸いてぇんならテメーも吸いやぁいいだろ。ソレよりよ、俺の話聞いてねぇのか?」
「…テメェの御蔭でこっちゃぁ腰固定必須だっつーの。煙草まで手ぇ届きますかコノヤロー」

試しに伸ばされた手は、中途半端なところで伸びきりプルプルと震えている。

仕方ねぇなぁ、ったく。
舌打ち混じりに呟いて、高杉が煙を含んだ。

ベッドの上でうつ伏せになっていた土方が、顎を持ち上げられ、腕を立てて上体を少し上げた。

触れ合った唇。流れてきたのは慣れない煙管の主流煙。
土方は眉根を寄せた。


「……で? 何だよ、話って」

胡坐をかいて座っていた高杉が、ニヤリとして身を屈めた。
こういった顔は、大抵良くない事を浮かべている時のそれだ。
土方は「またか…」と呟き、げんなりとした顔で明後日の方を向く。


「ガキだよ、ガキ」

「はぁ?……ガキっつーと……なんだ?」

「そのまんまじゃねーか。子供だよ」

眉根を寄せて難しい顔をしたまま、土方の思考が一時的に凍結。


「………はぁ」

「さんざん考えた挙句間抜けな声出すんじゃねぇよ」

しかし、いや、ちょっと待て。
土方は暫し頭を抱えて低く唸った。

「…まさかお前、何処かで、その……作った、…のか? 子供を……」

この男なら…在り得る。

いや、むしろ今までその類の話が出なかったのが不思議なのだ。
しかも、後の責任を取るような男とは、お世辞にも言えない。
土方は真面目な目で高杉を見た。
確実に非道を責める差別の目をしている。高杉は流石にげんなりして頬を掻いた。


「…テメェも大概デリカシーってモンに欠けるよな」
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