奪還屋 小説

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「暇潰しに、ゲームなんてどうですか?」

突然放たれた一言

目の前には割り箸を手にした絃巻きが立っていた…


-game-


「ゲームだぁ?」

そう答えたら笑顔で頷いた

「王様ゲームですよ。こういうの美堂君好きでしょう?」

そりゃ女相手になら好きだが…周りを見渡せば、女なんか見当たらない
というかヤツらの性格上、女なんか入れないだろう

「…野郎相手に、んなゲームやったって面白いわけねーだろ」

馬鹿馬鹿しい、と呟き、タバコに火を点けた

「ただやるなら面白くはないですよ」
「…意味深な言い方しやがるな。どんなやり方か言ってみろよ」

煙を吐き出して問う

「"逆王様ゲーム"ですよ」
「逆、だぁ?」

話はこうだ

"クジの中に、当たりは一つ"

これは従来の王様ゲームと一緒

"当たりを引いた人が、周りの命令を聞く"

つまり当たりを引かなかった人、全員が王様というわけだ

「王様になる確率は高いですし、どんな命令でも受けるというルールですし…まぁ、"死ね"というのは流石に無理ですけど…どうです?そう考えると面白いと思いませんか?」

"どんな命令でも受ける"

「へぇ、じゃあテメーは"メイド服着て接待"とかって命令も受けるっつーんだな?」

そう聞けば、最初と変わらぬ笑顔で「そうなれば受けますよ」と言った

日頃のストレスを解消するチャンスかもしれねぇ
まぁ、少しばかり溜まるかもしれないが…

「良いぜ、やってやろーじゃねーの」

火を消ながらそう言っちまったのが、悲劇の始まりだった


******


なんなんだ、この状況は

場所は無限城、ロウアータウン

トンクでやりゃあ良いじゃねーかと思ったが、内容が内容だっただけに移動した

無限城には銀次、猿マワシ、サムライ君、遠当て野郎が来て、やはり野郎ばっかりだというのがわかる

周りにはヒッキー君に用意してもらったとかなんとかで、メイド服だのナース服だの女装用の服

はたまたネコミミやら尻尾やら、あとは様々なタイプのヅラが並んでいたり…

ルールは簡単

割り箸を引いて、赤い印が付いているのを引いてしまったらソイツが周りの連中の命令を聞く

そのルールに対して、誰も不満は言わなかった

こうして逆王様ゲームが始まったのだが…

もう一回言わせてくれ

なんなんだ、この状況は

「また、美堂君が当たりですね」
「ここまでくると…なんとも言えないな」
「次どんな服が良い?!蛮ちゃん何を着ても似合うもんねー!!」
「もう一通り試した気もするが…」
「ヅラのパターンならまだ残ってるんじゃないのか?」

そう、当たりの連続

さっきから罰ゲームばっかり受けてんだ

おかしい、この状況はおかしすぎる

この確率はありえねぇだろ…!!


…そうか、ここはロウアータウン

なんでもっと早く気付かなかったんだ!!

ヒッキー君に頼んでバーチャルとかでこういう状況になったに違いねぇ!!

この場所自体が仕組まれたことだとしたら…

俺は引いた割り箸に誰も気付かないくらい小さな傷を付け、戻した

これで傷を付いていないのを引いて当たりだったら

「じゃあ次、引きましょうか」

絃巻きの一声で、皆で割り箸を引いた

もちろん傷の付いてないヤツを

それなのに

「ぁ、また蛮ちゃんが当たりだー!!」

また当たり

俺がさっき引いた割り箸は、サムライ君が持っていた
しかし、もちろんそれは当たりじゃない

やっぱりこれは仕組まれてる、そう確信した

「ちょっと待ちやがれ!!どう考えたっておかしすぎるだろーが!!」
「なにがおかしいんですか?」

微笑みながらそう放つ絃巻き
…コイツ、やっぱり仕組んでやがったな

「この確率、あまりにも有り得ねぇんでな…ちょっと細工させてもらったぜ」

そう言って、サムライ君が手にしてた割り箸をひょい、と奪い、傷を見せた

…次に放たれた言葉は、信じられないものだった

「不正、ですか…いけませんね、美堂君」
「なっ…?!」

おいおい、不正はむしろそっちの方なんじゃねーのかよ…!!

「罰ゲームも、少し厳しめにさせてもらいますねvV」

その言葉と同時に、そこにいた連中がじわじわと近づいてくる

「ちょっと待っ…おかしいだろォォオ!!」


******


なんなんだこの状況は

もう何度だって言ってやる

「お似合いですよ、美堂君」
「お似合いですよ、じゃねぇぇえ!!」

ヅラやら服やら小物やらそりゃもうあるもんを各1つずつ付けられた

ネコミミから始まって、長髪のヅラ、眼鏡、ワンピース(ミニスカ)、尻尾にニーハイ、ローハーといった具合に、だ…

逃げられないようにご丁寧に絃で縛られてな

「それにしても良い眺めだな」
「眺めとか言うな!!」

もうコイツら嫌だ、意味わかんねぇ

「うわー、すごいスカートが短いね、蛮ちゃん…」
「つか銀次!!なんでテメーまで一緒になってんだ!!早くこれ解け!!んでもって俺の服を寄越せ!!」
「えっと…もう少しだけー、ね?」

ね?、じゃねぇぇえ!!
銀次、後で覚えてろよ…?!

「このままで運転したらどうなるんだろうな」

…遠当て野郎、テメー、余計なこと言いやがって…!!
こんな格好で運転なんてしてなんになるっていうんだよ

「あぁ、良いね、それ」

乗るな、絃巻きィィイ!!
だからこんな格好で運転なんか、なんの意味があるっつーんだよ!!

「ということで最後の罰ゲームはその格好で運転するってことにしようか」

最後の、というのに少しだけ安心したのだが…どうも腑に落ちない
でも、もういいや…最後ならどうだっていいや…と半分諦め気味な俺

「じゃあ誰が助手席に乗るかが重要になるかと思うのだが」
「ダメです!!」

…銀次?!
ようやくここで止めてくれるのか、と、期待した矢先

「蛮ちゃんの助手席は俺の指定席なのですー!!」

俺の期待を返してほしい…
やっぱりそっち側の人間だったんだな…と

「こればっかりは雷帝と言えども譲るわけにはいかないな!!」
「ミニスカで運転の醍醐味は隣で太ももを見ることに決まっている!!」

太ももかよ!!
ああもう、罰ゲームだから俺様に選択肢がないのはわかってるんだが…今すぐ逃げたい

コイツら馬鹿だ

もうやだ帰りたい

ギャーギャー騒いでるのを心の中で泣きながら傍観していたら


「?!」

誰かに口元を手で塞がれ、そのまま後ろに引っ張られた

気づいたら外に出ていて、絃が解けた感覚がきた
自由になれたという感情と共に、誰が助けてくれたのかという疑問が出てきて…

「素敵な格好ですね、美堂君」

聞き覚えのある声が後ろから聞こえてくる

ああ、良いんだか悪いんだかわかんなくなってきた…

これは振り返ったらダメなパターンじゃねーの?

でも仮にも助けてもらったわけで、お礼くらいは言わなきゃいけないわけで、でもこの状況はさっきと変わらないくらいヤバイパターンなわけで…

恐る恐る後ろを振り返ると…

「こんばんは」

メスを片手に笑顔の赤屍が…

「やっぱりテメーか…」
「おやおや、せっかく助けて差し上げたのに」

いや、はい、その件に関しては感謝の気持ちでいっぱい…いっぱい?
とりあえず感謝の気持ちはあります、はい

「なんで無限城にいたんだ?」
「なにやら楽しいことが行われると聞きましたので」

波児、話やがったな…
ぐったりしつつも、とりあえず外せるものは外しておいた
…さすがに服はどうしようもなかったけど

「とりあえずそのままでは風邪を引きますから、そうですねぇ…私ので良ければ服をお貸ししますけど?そのままお店に行くわけにもいかないでしょう?」
「そいつはありがたいが…」

イコール、密室に二人

…それもどうかと

ああもう、このままでいるわけにもいかねぇし、いざとなったら邪眼で逃げようそうしよう

「いや、そーさせてもらうわ」
「ここから少し遠いので車を出していただけるとありがたいのですが…」
「へーへー、車もすぐそこにあるんで、勝手に乗れ」

考えてみればここまで車を持ってくるのも絃巻きの指示だったな…アイツら、最初からこのつもりだったんだな…胸糞悪りぃぜ

車まで案内し、あとは乗り込んでエンジンをかけた

助手席に赤屍っつーのも、なんか不思議な感じがしてならない

「道案内は任せるからな」
「もちろんですよ、私の家ですし」

ゆっくりと車を走らせた

「それにしても災難でしたね」
「全くだぜ、あれは絶対ヒッキー君が裏で糸引いてやがったに決まってる」
「で、罰ゲームの連続でそのような格好に…」
「あぁ、あげくの果てにこの格好で運転しろとか吐かしやがって…」

…運転?

「何故運転を?」
「何故って…そりゃあ…ミニスカで運転…あああああ!!」

気づいた時には、時すでに遅し

「…えぇ、とても良い眺めですよ、美堂君vV」


…無限城にて行われた、逆王様ゲームは

助手席、お持ち帰りを勝ち取った(奪い取った)

赤屍蔵人の一人勝ちである

END


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