奪還屋 小説

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全く、どうしてくれんだよ


-Only-


毎年思ってたこと

誕生日なんてどうでも良い

毎年考えていたこと

なくても良い記念日

素朴な疑問

もしも誰かが祝ってくれたなら…この日は良い日になるんだろうか…?

そう思い始めたら

誰でも良いから祝ってほしくて

HONKY-T0NK、店内にて

「つーわけで、今日、この美堂蛮様の誕生日なんだけど?」

と、すぐ隣に座っていた猿マワシに問い掛けてみた

他の連中には聞こえないくらいの小さな声で

そしたらアイツ、一瞬驚いた顔をした

「誕生日…?」
「そ、生まれた日」

そう言うと、猿マワシはいきなり立ち上がった

「…っ?!」

早々に代金を払い、店を出て行く

銀次の「帰っちゃうの?用事?」って言葉にも耳を貸さなかった

なんなんだ、アイツ

つーか、祝いの言葉もなしかよ!!

「意味不明ー…」

ブツブツ呟きながらいつもの通りツケにし、銀次を残して店を後にした

ほら、てんとう虫クンをレッカーされないようにな

…てかさ、言わなきゃ良かったのか?

今まで通りに、誰にも言わずに生活しときゃ良かったんだろうな

そう思いながら煙草に火をつけて、そこら辺をブラブラ歩いていた

大体、さすがに何か言えよな

俺様だってな、若干期待してお前だけに言ったわけなんだしよ

「マジで意味不明だ」

ふー、と煙を吐き出す

雪でも降んねぇかな

…お天道さんぐれぇ、誕生日祝ってくれたって良いじゃねぇか

そう思ってたらよ

なんか落ちてくんの、白い物体

そんでもってさ

「…マジかよ」

んな少女漫画的な展開って…有りかよ

走ってくる、アイツが

「店…、行ったら、いねぇ…って言われ、てよ…」

肩で息してる

よほど急いで来たらしい

「…なんだよ、なんか用でもあったわけ?」

そう問い掛けたら、箱を渡された

「なに買えば良いかわかんなくてな、…手っ取り早く、食いモンにしてみた」

覗き込むと、箱に入っていたのは…ケーキ1ホールで

「多すぎんだろ」

って言ったら

「…一緒に、食えば良いだろ」

と、俯きながら言われた

「祝ってくれるわけ?」

って聞いたら

ただ、ただ、頷いた

誰でも良かったはずなのに

なんでだろう、お前じゃなきゃ駄目だと感じるようになった

どうしてくれるんだ

もうお前以外のヤツと誕生日を過ごすなんて考えられなくなったじゃねぇか

責任とって

…毎年祝えよな

このケーキ食い終わったらそう言ってやる

そう決めて、ゆっくりとアイツの隣を歩いて行った

END
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