狗狼綺譚 -琥珀と真紅の想い-

□第2話 謎は謎のまま -護衛と監視-
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未だ晴れない霧の中、謎の女を抱えて走る姉ちゃんの足は、止まるどころか速くなる一方だった。



早朝で人気もないおかげで、見咎められることもなく病院へ飛び込む。



緊急窓口で手短に説明すると、徐々に慌ただしくなっていった。



そんな中、オレは何をするでもなく、処置室の壁際でボケッとその様子を眺めていた。



だって・・・することなんてねぇだろ?





―――アイツ・・・助かんのかな?





赤丸が言った事が本当で、アイツ=狼なら、かなりの出血のはずだ。



くるんでたオレのバスタオルも真っ赤っ赤だったし、うずくまってた場所にあった血溜まりも結構な大きさだったから。



オレたちの鼻が利かなくなる寸前の濃さの血の匂いからしても、かなりヤベェんじゃねえ?







着々と処置が進められる中、そんな事をぼんやり考えていたら、ドアを大きく開けて五代目が入って来た。



「正体不明の怪我人はコイツか?」


「はい!」


「状態は?意識はどうなんだい?」


「かなりの出血だったらしく、輸血をしていますが・・・予断を許せません。怪我も切り傷ではなく、何かに噛み千切られたような跡ばかりで縫合も出来ないんです」


「噛み千切られた!?いったい何に?」


「狼だよ」


「キバ・・・何故知っている?」



何気なく口を挟むと、五代目は初めて気づいたかのようにオレを見る。



「オレと赤丸が見つけたんですよ、そいつ」


「どこに居たと言うんだ?」


「うちの裏の森ん中で。赤丸が変な気配がするって言うから、見に言ったんす。そしたら5匹の狼がいて・・・」



家に連れ帰るまでの顛末を簡単に説明し、赤丸が言った台詞を言おうとしたら、五代目に遮られる。



治療が続けられている様子を見て五代目は、何故か人気の無い所へオレを連れ出した。





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