狗狼綺譚 -琥珀と真紅の想い-

□第1話 邂逅 -深い霧の中で-
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「う―わっ・・・すっげぇ霧・・・全然見えねぇじゃん。赤丸、どっちだ?」


(こっち!)



赤丸に導かれ、霧で視界の利かない森の中を進むと、“ある臭い”に気が付いた。



(キバ・・・!)


「ああ、分かってる・・・でも一人の臭いじゃねぇな、これ」



足を進めるごとに強くなって行く臭い。



・・・・・・・・・・“血”だ。



「!!!」



何かいる・・・気配は4つ・・・いや、5つか?



けど、そのうちの1つはかなり弱ってるみてぇだ・・・。



視界が悪くてそれが何なのか判別が出来ない。


血の臭いのせいで鼻でも嗅ぎ分けられねぇ・・・・・くそっ!



と、しびれを切らしたのか、1つがこっちに真っ直ぐ突進してきやがった!



何者かは知らねぇが、こちらも中忍なりたてとは言え忍の端くれ、あっさりとかわして正体を見定める。



「犬!?いや、狼か!?」


(キバっ!)



残りのうち、3つの気配も飛びかかって来たが、どう見ても狼なのに動きが並みじゃねぇ!



こいつら、忍狼か!?



「赤丸っっっ!!」


(オッケ―――!)


「牙通牙―――っ!!」



ドガガガガガッ!!



ギャイ――――ンッ!



4頭のうち3頭は仕留めたけど、1頭にはかわされて掠り傷を負わせただけだった。



でも、ソイツは向かって来ないで、足を引きずりながら去って行った。



「チッ!逃したか!・・・・・赤丸!追わなくていい!」


(でも・・・またきたらどうするの?)


「それよりも、動かねぇヤツが何者か確認しねぇと」


(そうだね・・・あっち!)



さっきより僅かに薄らんできた霧の中、残りの気配へと近づく。



(・・・っキバ!ぼくのいったきになるのって、このけはいだよ!)


「あぁ、確かに人のようだけど人じゃないみたいな・・・何なんだ?」


(あそこ!!)



視界に黒い塊がうずくまっているのが入ったが、ピクリとも動かない。



辺りにはかなりの量の血が流れていて、それはその黒いものから出たものらしかった。



「こいつも狼か?さっきのヤツらの仲間・・・?」


(キバ―!それより、このこたすけないの?すごいけがだよ?)


「あ!そうだよな!まずは連れてかねぇと!!行くぞ、赤丸っ!」



オレは蹲って浅い息をしている狼を抱き上げると、フルスピードで家に戻った。





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