狗狼綺譚 -琥珀と真紅の想い-

□プロローグ
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-プロローグ-





私の記憶の始まりは、暗い森の中。





いつも怖かった。





いつも寒かった。





常に怯え、隠れ、物音を立てずに密やかに生活をしていた。



とても恐ろしい何かが迫って来る気配を感じ取ると、兄さんと共に住処としていた家屋を棄て、安心して眠れる所を探して彷徨う。



一時落ち着いたとしても、追い立てられるかのように、また他の場所へ。



何故こんな生活をしなければならないのか、全てを理解出来たのは、ほんの数年前・・・



ただ、その理由までは分からないままだけれど。









―――――ハァッ!・・・ハァッ!・・・ハァッ!



ザザ・・・・・ッ! ガサッ!ガサガサガサッ!!





『兄さん、しっかり!あと少しで木の葉の里に着くわ!』



段々と重さを増す体を必死で支えながら、声をかける。



「・・・・・・・・・・ろ・・・」


『えっ?』


「俺を・・・置いて、逃げろ!」


『なっ!?兄さん!?何いっ「俺はもう無理だ!」!!』


「このままでは・・・お前も危ない・・・お前だけでも、木の葉へ行け!!」


『イヤよっ!兄さんも一緒に!!』


「生きろ・・・・・!お前の・・・幸せを、祈っているよ・・・」



バッ!



肩に回していた腕を振り払うと、兄さんは迫ってくるモノ達へと向かって行った。



『兄さん!!』


「行け――――――っ!!」


『兄さぁ――――んっ!!』





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