狗狼綺譚 -琥珀と真紅の想い-
□プロローグ
1ページ/1ページ
-プロローグ-
私の記憶の始まりは、暗い森の中。
いつも怖かった。
いつも寒かった。
常に怯え、隠れ、物音を立てずに密やかに生活をしていた。
とても恐ろしい何かが迫って来る気配を感じ取ると、兄さんと共に住処としていた家屋を棄て、安心して眠れる所を探して彷徨う。
一時落ち着いたとしても、追い立てられるかのように、また他の場所へ。
何故こんな生活をしなければならないのか、全てを理解出来たのは、ほんの数年前・・・
ただ、その理由までは分からないままだけれど。
―――――ハァッ!・・・ハァッ!・・・ハァッ!
ザザ・・・・・ッ! ガサッ!ガサガサガサッ!!
『兄さん、しっかり!あと少しで木の葉の里に着くわ!』
段々と重さを増す体を必死で支えながら、声をかける。
「・・・・・・・・・・ろ・・・」
『えっ?』
「俺を・・・置いて、逃げろ!」
『なっ!?兄さん!?何いっ「俺はもう無理だ!」!!』
「このままでは・・・お前も危ない・・・お前だけでも、木の葉へ行け!!」
『イヤよっ!兄さんも一緒に!!』
「生きろ・・・・・!お前の・・・幸せを、祈っているよ・・・」
バッ!
肩に回していた腕を振り払うと、兄さんは迫ってくるモノ達へと向かって行った。
『兄さん!!』
「行け――――――っ!!」
『兄さぁ――――んっ!!』
.