精霊のブローチ
□プロローグ
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幸せ、まさにそうだったんだろう。
綺麗な花、美しい鳥の囀り。
優しいお父さま、お母さま。
その真ん中で幸せを奏でる。
何かが欲しいわけではなかった。
今のままで十分だった。
ねぇ、私は幸せよ。
このままでいいの。
このままがいいの。
だから
壊さないでよ、奪わないでよ。
運命の歯車はどこで狂ってしまったのかしら…
それは今この瞬間?
それとも私が生まれた時から?
それとも私が生まれてくるずっと前から?
訊ねても返ってくる答えはない。
分かってる。
終わるのは一瞬。
失うのも一瞬。
それなら ねぇ、
今この瞬間だけ
この瞬間だけでも
もう一度幸せを奏でさせて。
愛しい人が還ってくる事を願って…
永久に終わらない夢を見る。
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