精霊のブローチ

00
1ページ/1ページ


柔らかな芝生。
照り付ける黄金の太陽。
涼しそうな木陰で唄う小鳥達。
色とりどりの花。

幸せ、まさにその真ん中にいた。

のどかな平和そうな雰囲気に、思わず木陰で眠りそうになる。

彼女がうとうとしかけた時、

「ほらそんなところで寝ちゃ駄目だろう。」

父の声が頭上からふってきて、眠かった眼もぱっちり覚めた。

「お父さま!!」

嬉しそうに立ち上がり父に駆け寄るその姿はまさに微笑ましい親子そのもの。

「今日は天気もいいから久しぶりに外で弾こうと思ってね。
歌うかい?」

そう言って手に持っていたバイオリンを娘に見せる。

「えぇ、もちろんっ!」

父の奏でる軽やかな旋律にやわらかい歌声をのせる。

そうしているともう一つ足音がする。

「あらあら、楽しそうな事をなさって。
私も混ぜてくださいな。」

視線を向けると微笑みながら現れる母の姿。

「お母さまっ!!」

駆け寄りそのまま抱きつく。
そうすると抱きしめ返してくれる確かな温もり。


"幸せ"

その言葉がぴったりな姿。
微笑ましい親子三人。

今があれば何もいらない。
だってもう幸せだもの。

この幸せがずっと続く。
今も昔も未来も。
そう信じて疑わなかった。

.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ