別に欲求不満ってわけじゃないと思うの。多分、こう思うのが自然な流れなはずよ。 (──ねぇ、こっち向いてキスして) なんて、言えたらいいんだけれど。何せ彼は物腰が柔らかくて紳士だし。 「どうしたの?」 「(いつもあなたの事ばかりよ、なんて言えたらなあ…)ちょっとぼうっとしてた、ゴメン リーマス」 慌ててニッコリと笑うとリーマスは一度考えるような仕草をして、チェスの駒に何か指示をした。そうよ、今はチェスに集中しなきゃいけないのよね。 「お嬢さん、お嬢さん。敵兵から伝言ですぞ」 「え、なあに?」 キングがウィンクをし、耳を近寄せた私にこう囁いた。 (この勝負、勝ったら君の唇を頂いても良いでしょうか?) 無論今日こそは負けてはなりませんぞ、とキングが言ったけれど生憎私はリーマスに勝てたことがないもの。それにキスして欲しいと思ったのは確かだし。……まさか顔に出てたのかしら。 不安にチラリと視線を向ければ彼は朗らかに笑い「チェックメイト」とのたもうた。 |