□言霊
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知ってる。わたしは近くなりすぎたんだって。








「サスケ君!わたしじゃダメなの?」


最近よく耳にする、噂。
『サスケが毎日違う女と歩いてる』



ナルトが───いなくなったから。






ナルトは任務の帰りに何者かに襲われて消息不明になった。もし無事ならばナルトは必ず帰ってくる。サスケ君もわたしも生きてるって信じてた。

だけど、ささいな情報さえもなく、もう五年。ほぼ可能性はないのだと悟らざるを得なくなった。

元々ナルトに冷たかった里は今度のことにも冷淡で。火影様と、ナルトと親しい関係者しか探そうとしなかった。サスケ君は必死だった。任務の間をぬって、何度でも、どこへでも探しに行った。体も心も衰弱しているように見えた。





そうして最近。とうとうサスケ君は壊れたのだ。満たされない想いを埋めようとして。
埋まらないことは本人が一番分かっているのに。
何も知らないで喜んでいるような女はいっぱいいる。一夜かぎりの関係は彼にとって何の意味もないというのに。いや、彼の自己嫌悪を増長させるのだろう。


そんな、何も知らない女にサスケ君を一晩でも獲られるくらいなら。彼以外の誰でも同じというのなら。



わたしを選んで───?



わたしはサスケ君の伴侶なんてポジションを狙ってるわけじゃない。
それは無理なことはわかってるし、今では望んでいない。


それでも。ナルトの穴を少しでも埋められるのなら自分がその存在になりたいと思う。


「わたしならどうでもいいから!だから他の人の所になんて行かないでよ、サスケ君!!」


わたし耐えられないよ、そんなサスケ君。
必死に彼に呼びかけた。

振り向いた彼は虚ろな瞳で、それでもこちらに向き直った。


「サス「悪ぃ、サクラ。お前は…お前だけは駄目なんだ。お前は…仲間だから」


尚も言葉を続けようとしたわたしの言葉を断ち切って。彼は苦しそうに少し笑った。


『サスケぇ!サクラちゃんを泣かせたら承知しないってばよ!俺たちは仲間なんだかんさ』


サスケ君ずるいよ。そんなこと言われたら、何も言えないじゃない。
わたしは二人に近くなりすぎた。だから傷ついた彼を救ってあげられないだなんて、なんて滑稽な話なんだろう。


でも、喜んでる自分がいる。仲間だと…思っていたのは自分だけではなかったという思いが胸を満たしたから。

昔の彼では有り得なかった思いが、わたしに向いているのを知って素直に嬉しい。

そうしてくれたのはあの金髪で元気一杯で、その癖、人の痛みに誰よりも敏感なアイツ。


ナルト、あんた何やってんのよ。早く帰ってきなさいよッ。



ねぇ、あんたって本当に馬鹿よ。こんなにあんたのことを心配してる人がいるっていうのに。

あんたしかこの人を救えなっていうのに、いないなんて。


本当、ウスラトンカチでドベ。


ねぇ、ナルト。お願いだから帰ってきて。

この里に───。

サスケ君の懐に───。
end

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