□誰ソ彼
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火曜の三時間目。

一週間に一度だけ君を見られる日がある。





「なあ、シカマル。今日は何?」

「今日は酸化還元反応の実験だとよ」

「やたっ、実験!」

「めんどくせぇだけだっての」

近づいてくる明るい声。ネジは人知れず頬を緩めた。









化学室は離れ校舎にあり、休み時間ごとに生徒会室にいなければならないネジにとって化学室で授業というのは歓迎するものではなかったのだ、今までは。

「あ、ちょっと日向君」

授業後。今日も急いで生徒会室に行こうとしていたネジはかけられた声に足を止めた。

「剣道部の部費、もーちょっとどうにかならないかなぁって」

…まただ。何度も無理だと言ってるにも関わらずこの教師は聞いてくる。
「それは
「いっちばーん!」

無理だ…と続けようとした時、急に聞こえてきた声に驚き振り返った。

そこには

「たかだか化学室に入るだけだろうが」

「甘いってばよ、シカマル!俺ってば、なんでもいっちばんな男!」

会いたいと思っていた彼がいた。

上機嫌で入って来た彼はしかし俺を見て言葉を飲み込んだ。

「シカマル…オレ一番じゃなかったってばよ…」

あまりにも残念そうに言うので俺はなんだか申し訳ない気分になった。

「何言ってんだよ。先輩じゃん」

「…へ?」

「上履き見りゃあわかんだろ?」

一年生は赤、二年生は緑そうして三年生は青の線がはいった上履きを履いている。

「ほんとだ」

じっと俺の靴を見る視線に耐えかねた俺はほとんど無意識に教師に向かって退室の意志を述べていた。あんなに焦がれた青がそこにあるのになんと不甲斐ない。
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